最近、ニュースやSNSを見ていると「Z世代」という言葉を聞かない日はありませんよね。企業のマーケティング担当者だけでなく、日常会話の中でも頻繁に使われるようになりましたが、ふと疑問に思うことはないでしょうか。「一体、Z世代って誰が言い出した言葉なの?」と。

その由来や意味、そして定義における年齢はいつからいつまでなのか、正確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。私自身もなんとなく雰囲気で使っていましたが、改めて一次情報(研究機関の定義や当時の業界での用例)をたどってみると、その背景には「次の消費者像を言語化したい」という実務的な事情や、定着するまでの意外な経緯がありました。
今回は、この言葉が生まれた具体的なきっかけや、日本でこれほどまでに定着した理由について、詳しく深掘りして解説していきます。
- Z世代という名称が生まれた具体的な時期と最初の提唱者
- なぜXやYではなく「Z」というアルファベットが採用されたのか
- 日本国内での普及に大きく貢献した人物と定着のきっかけ
- Z世代の具体的な年齢定義とスマホネイティブな特徴
Z世代は誰が言い出したのか起源と由来
ここでは、今や世界中で共通言語となっている「Z世代」という言葉が、いつ、どこで、誰によって広く使われ始めたのか、そのルーツを深掘りしていきます。実は、ある一人の天才が突然思いついたというより、業界内での呼称が徐々に形になっていった、というのが実情に近いんです。
- Z世代という言葉の由来と意味
- 米国のアドエイジ誌による命名の経緯
- なぜZなのかアルファベット順の理由
- 定義における年齢はいつからいつまで
- iGenなどの別名が定着しなかった訳
Z世代という言葉の由来と意味
普段、私たちが何気なく使っている「Z世代(Generation Z)」という言葉ですが、これは単に「いまどきの若い人たち」を指すだけの若者言葉ではありません。
社会学やマーケティングの世界では、ある特定の期間に生まれ、戦争や技術革新といった共通の歴史的体験や価値観を共有しやすい集団を「世代(コホート)」として区分けして分析します。同じ時代に成長期を過ごした人たちは、メディア環境や社会状況の影響を受けやすく、行動や価値観に一定の傾向が出ることがあるからです。
Z世代という名称は、もともとアメリカを中心に広まった概念です。子ども時代からインターネットやデジタル機器が身近にある環境で育った層を、前の世代と区別して捉えたい——その必要性が学術・メディア・マーケティングの各領域で高まり、呼び名が整理されていきました。つまり「マーケティング業界だけが勝手に名付けた」というより、実務と研究の両方で使いやすいラベルとして、結果的に定着していったと考えるのが正確です。
米国のアドエイジ誌による命名の経緯
では、具体的に「Z世代は誰が言い出した」のかというと、初期の用例として頻繁に参照されるのが、米国の広告・マーケティング業界誌である『Advertising Age(アドバタイジング・エイジ)』です。
複数の解説資料で、2000年9月頃の同誌記事が「Generation Z」という呼称の早い時期の使用例として挙げられています。当時の業界では、主戦場が「ミレニアル世代(当時は“Generation Y”と呼ばれることも多い)」へ移っていく中で、その次に控える子ども世代を仮のラベルで呼び、将来の変化を語る文脈がありました。

つまり、「Z世代」という言葉は、誰か一人が厳密な定義を与えて命名したというよりも、次のターゲット層を語るために、業界内で便宜的に使われ始めた「実務的な呼称」が、後から一般社会にも広がったもの——という見立てが現実に近いと言えます。
なぜZなのかアルファベット順の理由
「それにしても、なぜZなの? 何かの頭文字?」と疑問に思う方も多いはずです。結論から言うと、広く受け入れられている説明はアルファベット順(X→Y→Z)という整理です。ここまでの世代名称の流れを整理してみましょう。

| 世代名称 | 由来・背景 | 備考 |
|---|---|---|
| Generation X (X世代) | ダグラス・クープランドの小説『Generation X(1991年)』が強い普及要因。 | 未知数「X」を想起させる記号性もあり、名称として定着。 |
| Generation Y (Y世代) | 『Advertising Age』が1990年代に用いた呼称(当時はXの次としての意味合い)。 | のちに「ミレニアル世代(Millennials)」の呼び名が広く定着。 |
| Generation Z (Z世代) | 『Advertising Age』などで、次世代を指す仮のラベルとして用例が見られる。 | Yの次としてZが採用され、結果的に一般名として定着。 |
このように、先行する世代が「X」から始まり、その次が「Y」と整理されていた流れの中で、「Z」が“続きの記号”として使われたのが自然な経緯です。もともとは仮置きに近い呼び方だったものが、メディア・研究・ビジネスの各所で繰り返し使われるうちに、いつの間にか「一番通りが良い名称」として固まっていった、というイメージですね。
定義における年齢はいつからいつまで
「Z世代」の範囲については機関や文脈によって多少の違いがありますが、国際的に参照されることが多い定義の一つが、米国の調査研究機関「ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)」が2019年に示した区分です。
世界的によく参照される定義の一例(ピュー・リサーチ・センター)
1997年から2012年生まれを「Z世代(Generation Z)」とする。
この区分の説明でポイントとして挙げられているのが、「大きな社会的出来事の経験の違い」と「テクノロジー環境」です。たとえばピュー・リサーチ・センターは、ミレニアル世代(同機関の区分では1981〜1996年生まれ)を語る上で、2001年のアメリカ同時多発テロ(9.11)が“形成的な出来事”になった点などを例に示しています。一方で、1997年以降に生まれた層は、少なくとも当時の社会状況を同じようには体験していない(年齢的に影響の受け方が異なる)と整理されました。
また、iPhone(2007年発売)が登場した頃に小学生〜中学生だった層が含まれ、思春期のコミュニケーションや情報行動がスマートフォン前提になりやすいことも、前の世代と区切る理由として語られます。
(出典:Pew Research Center『Where Millennials end and Generation Z begins』)

iGenなどの別名が定着しなかった訳
実は「Z世代」という呼び名が完全に定着する前には、専門家やメディアによって他の呼び名も提案され、呼称の“競争”が起きていました。
主な競合名称とその敗因
- iGen(アイ・ジェン):心理学者のジーン・トゥエンジ氏が提唱。スマートフォンやSNSと共に育った世代という意味で直感的ですが、一般読者にとっては“特定企業の製品名(iPhone等)を強く連想させる”面もあり、中立的な世代名としては使いにくいと受け止められやすかった点が普及の壁になりました。
- Homelanders(ホームランダーズ):ストラウス&ハウが「Homeland Generation(Homelanders)」という呼称を採用した例があります。9.11以降の安全保障・監視強化の時代に幼少期を過ごす、という米国の文脈に根差した意味合いが強く、国や地域をまたいで通用しにくいことが、世界標準の呼称になりにくかった理由の一つとされています。

結果として、特定の企業名や政治的文脈に寄りにくく、誰にとっても中立的で使いやすい「Z世代」という記号的な名称が、最も抵抗なく受け入れられた——という整理が現実的です。
日本でZ世代は誰が言い出したのか
アメリカを中心に広まった言葉が、なぜ時間差で日本でもこれほど一般的になったのでしょうか。ここでは日本国内における普及の立役者や、日本独自の「ゆとり世代」との関係について解説します。
- 国内での普及に貢献した原田曜平氏
- 流行語大賞への選出と定着の背景
- ゆとり世代と比較した日本の特徴
- スマホネイティブというZ世代の特徴
- 次の世代であるα世代との関係性
- Z世代は誰が言い出したのか総まとめ
国内での普及に貢献した原田曜平氏
日本において「Z世代」という言葉をマーケティング用語の枠を超えて広く浸透させたキーパーソンの一人として挙げられるのが、マーケティングアナリストの原田曜平氏です。
原田氏は以前から若者研究で知られ(「マイルドヤンキー」「さとり世代」などの文脈でも言及されてきました)、日本の若者像を語る際に、海外で一般化していた「Z世代」という呼称を日本の文脈でも説明しやすい形で紹介する機会が増えていきました。特に2019年〜2021年頃にかけて、著書やインタビュー、メディア出演などを通じて「Z世代」という言葉が一般層にも届きやすくなった面があります。

それまでの日本では、若者を「さとり世代(欲がない)」や「消費しない若者」と呼ぶことが多く、どこかネガティブな文脈で語られがちでした。
しかし原田氏は、SNSでの発信力や価値観の変化(たとえば“意味”や“共感”を重視する購買行動など)に注目し、「Z世代」というラベルを用いて説明しました。彼が分かりやすい言葉で発信したことで、多くの大人が「なるほど、今の若者はそういう環境で育っているのか」と捉え直すきっかけになったのです。
流行語大賞への選出と定着の背景
言葉の定着が決定的となった出来事の一つが、2021年の「ユーキャン新語・流行語大賞」です。この年のトップ10に「Z世代」が選出されました。
この時期は、TikTokやYouTubeなどの動画プラットフォームを含むSNS経由で、若者発の言葉やカルチャーが一気に可視化されやすくなっていました。そうした“若者トレンドの担い手”をまとめて表現する便利な言葉として、「Z世代」が機能した面があります。
また、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっていた時期でもあり、環境問題やジェンダー平等(ジェンダーレス)に関する話題と、若年層の関心が結びつけて語られることも増えました。こうした流れの中で、テレビのニュース番組や企業のプレスリリースでも「Z世代」という言葉が日常的に使われるようになり、一般社会に定着していきました。
ゆとり世代と比較した日本の特徴
実は、日本で「Z世代」という言葉が広まるのが遅れた要因の一つに、日本独自の強力な世代ラベルである「ゆとり世代」の存在がありました。
日本では「ゆとり教育」(学習指導要領の改訂などに基づき2002年度以降に本格化)の影響を受けた層が、一般に「ゆとり世代」と呼ばれてきました。出生年の目安は1987年頃〜2004年頃とされることが多く(定義には幅があります)、この期間は、世界基準で語られる「ミレニアル世代」や「Z世代の一部」と重なります。
日本のメディアや企業にとっては「ゆとり」という言葉があまりに便利で馴染み深かったため、わざわざ海外の「Z世代」という概念を輸入して使う必要性が薄かったのです。しかし、ゆとり教育の方針転換(いわゆる“脱ゆとり”)後の世代が社会に出始めるタイミングで、「ゆとり」とは別の文脈で若年層を説明する新しい言葉が求められ、そこで「Z世代」が当てはめられやすくなった、という背景があります。

スマホネイティブというZ世代の特徴
Z世代を語る上で頻繁に挙げられる特徴が、「スマホネイティブ(デジタルネイティブ)」であることです。もちろん個人差はありますが、幼少期からスマートフォンやSNSが身近にあり、情報収集やコミュニケーションの前提が前世代と変わりやすい、とされます(世代間のテキスト文化のズレを象徴する例としては、「おじさん構文」とは?55の例文・心理・対処法を完全解説のような話題が分かりやすいです)。
Z世代の情報収集スタイルの特徴
- 「ググる」から「タグる」へ:検索エンジンだけでなく、InstagramやTikTokなどでハッシュタグ検索を使って情報を探す行動が語られることが増えています。
- 動画での情報収集:テキストよりも動画(YouTube、TikTok)で直感的に情報を得る場面が多い、と指摘されます。
- 広告への警戒心:企業広告をそのまま信じるのではなく、インフルエンサーや一般ユーザーの投稿、レビューなど複数情報を見比べて判断する傾向があると言われます(広告を避けるために設定や機能を工夫する人もいます)。

SNS上の表現では、プロフィールや投稿文(キャプション)で使う絵文字・顔文字のトレンドも変化が速く、たとえば韓国の絵文字組み合わせのコピペ集!使い方と最新トレンドのように、具体例を押さえておくと「今っぽい表現」がイメージしやすくなります。
また、日本では長期的な経済停滞や将来不安が語られやすい時代に成長したこともあり、堅実に情報を集めて「失敗したくない」と感じやすい層として説明されることがあります。買い物前にSNSやレビューを丁寧に確認したり、コストパフォーマンス(コスパ)だけでなく、時間の効率性である「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する、といった語られ方もその延長線上にあります。
次の世代であるα世代との関係性
最後に、Z世代の次に控える世代についても少し触れておきましょう。Zの次は、アルファベットが一巡した後に「α(アルファ)」という呼称が提案され、「α世代(アルファ世代)」と呼ばれることがあります。
年齢範囲には複数の見解がありますが、概ね2010年頃以降に生まれた子どもたちを指す説明がよく見られます。彼らは物心ついた頃から動画コンテンツやタブレット端末に触れる機会が多く、音声アシスタントや生成AIのような新しい技術がより身近な環境で育つ可能性があります。親の多くはミレニアル世代であり、Z世代のお兄さん・お姉さんの影響も受けつつ、さらにデジタル化が進んだ環境で価値観が形づくられていく——そう考えると、今後の成長とともに社会へ与えるインパクトはますます大きくなるはずです。

Z世代は誰が言い出したのか総まとめ
今回は「Z世代誰が言い出した」という疑問からスタートし、その起源や日本での広まりについて詳しく見てきました。
まとめると、Z世代という言葉は、2000年頃の米国広告業界メディア(『Advertising Age』など)での早期用例が参照されやすく、先行するX・Y世代の流れを受けてアルファベット順の便宜的なラベルとして使われた側面がありました。その後、研究機関やメディアでも用いられるようになり、一般名として定着していった、というのが実態に近いです。日本では「ゆとり世代」などの強いラベルの影響で導入が遅れましたが、原田曜平氏のような発信者の紹介や、2021年の流行語大賞トップ10などをきっかけに、今の若者を表す言葉として広く浸透しました。
世代の定義や名称は、あくまで社会の動きを捉えるための「ものさし」の一つに過ぎません。個人の性格や価値観は人それぞれですので、「これだからZ世代は」とラベル貼りにこだわりすぎず、お互いの世代の違いを楽しみながら理解し合う姿勢が大切ですね。
由来を知ることで、ニュースやSNSで見る「Z世代」という言葉が、これまでとは少し違った角度から見えてくるのではないでしょうか。


