ラッコ絶滅危惧種対策とは?日本の現状と私たちにできること

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ラッコ絶滅危惧種対策とは?日本の現状と私たちにできること
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最近、久しぶりに水族館へ行ってみて「あれ?ラッコがいない…」と驚いた経験はありませんか?かつては水族館のアイドルとして多くの施設で見かけることができたラッコですが、実は今、日本国内での飼育数が劇的に減少し、風前の灯火ともいえる状況になっています。

水族館の水槽を泳ぐラッコのイラストと、1994年の122頭から2025年の2頭へ激減した飼育数の推移データ
日本の水族館におけるラッコ飼育数の推移と激減の現状

愛らしい仕草で私たちを癒やしてくれる彼らですが、その背後には、過去の乱獲による悲しい歴史や、現代の環境問題による新たな脅威など、あまり知られていない過酷な現実があります。「なぜこれほど減ってしまったのか」「絶滅を防ぐために世界ではどんな対策が取られているのか」、そして「私たちにできることはあるのか」。

この記事では、ラッコが直面している危機的な現状を深掘りし、未来へ命をつなぐために行われている具体的な取り組みについて、調査した内容を分かりやすくシェアします。

この記事のポイント
  • 絶滅の危機に瀕している歴史的背景と複合的な脅威
  • 水族館からラッコが消えつつある理由と法的背景
  • 代理母プログラムや具体的な保護活動
  • 募金やグッズ購入、観光時のマナー
目次

ラッコの絶滅危惧種対策と減少の現状

まずは、なぜラッコがここまで数を減らし、絶滅危惧種として扱われるようになってしまったのか、その根本的な原因と日本国内の現状について見ていきましょう。歴史を紐解くと、人間の経済活動が彼らに与えた影響の大きさに驚かされます。

  • ラッコが減少した原因と毛皮貿易の歴史
  • 日本の水族館からラッコがいなくなる理由
  • 日本における現在の生息数と野生回帰
  • 愛らしい性格と環境変化への脆弱性
  • シャチの捕食など新たな脅威の出現

ラッコが減少した原因と毛皮貿易の歴史

ラッコが絶滅の危機に瀕してしまった最大の要因として、18世紀から20世紀初頭にかけて行われた「毛皮目的の大規模な乱獲」が広く知られています。

ラッコの毛皮は哺乳類の中でも非常に高密度で、保温性が高いことで有名です。1741年に北太平洋(アラスカ周辺)でラッコの毛皮価値が注目されて以降、ロシア・欧米・東アジアなどを結ぶ交易の中で高値で取引され、北太平洋全域で捕獲が急拡大しました。

この「毛皮ラッシュ」の結果、かつては推定で数十万頭規模いたとされる個体数が、20世紀初頭にはわずか約1,000〜2,000頭程度の残存集団にまで落ち込んだと報告されています(推定には幅がありますが、“絶滅寸前まで追い込まれた”という点は各国の評価で一致しています)。

18世紀から20世紀初頭の航海図風イラストと、乱獲により遺伝的多様性が失われたことを示すDNAのイメージ図
毛皮貿易によるラッコ乱獲の歴史とボトルネック効果

ボトルネック効果の影響

その後、20世紀初頭にかけて国際的な保護の枠組み(北太平洋域での海獣保護の取り決めなど)が整備され、各地で回復傾向が見られるようになりました。ただし、一度極端に数が減ったことで遺伝的多様性が縮小した可能性がある点は重要です。こうした「ボトルネック効果」により、集団によっては病気や急激な環境変化への脆弱性が高まる恐れがあると指摘されています。

日本の水族館からラッコがいなくなる理由

「昔は水族館に行けば必ずラッコがいたのに」と懐かしむ方も多いでしょう。日本の水族館におけるラッコの飼育数は、ピーク時の1994年には全国28施設で122頭いました。しかし、2025年現在は鳥羽水族館の2頭(メイ、キラ)のみとなり、国内の展示は極めて限られた状況です。

なぜこれほど急激に減ってしまったのでしょうか。主な理由は以下の2点に集約されます。

1. 国際的な取引規制の強化

「輸入ができなくなった」という点は事実ですが、背景は少し整理が必要です。ラッコは国際取引が一定の管理下に置かれており(CITESでは多くの個体群が付属書II、南方(カリフォルニア)個体群は付属書Iでより厳格)、さらに主要な供給元になり得るアメリカでは、海棲哺乳類を包括的に保護する法律(1970年代以降の保護法制)によって捕獲・移送・輸出が原則として極めて難しくなっています。結果として、日本の水族館が海外から新しい個体を導入するハードルは非常に高く、現実的にはほぼ不可能に近い状態が続いてきました。

2. 飼育下での繁殖の難しさ

輸入が難しい以上、国内の個体同士で繁殖させるしかありませんでした。しかし、ラッコの繁殖は非常にデリケートです。相性の問題に加え、個体数が少ないほど遺伝的に偏らないペアリングが難しくなります。さらに国内個体の高齢化も進み、思うように数を増やすことができませんでした。

最後のオス「リロ」の死

ワシントン条約(CITES)の許可証のイメージと、国内最後のオス「リロ」の死亡により自然繁殖が困難になった現状を示すスライド
ラッコの輸入規制(CITES)と国内繁殖の課題

2025年1月4日、福岡のマリンワールド海の中道で飼育されていた国内唯一のオス「リロ」が死亡しました。これにより、日本国内の水族館にオス個体がいない状態となり、少なくとも自然なペア繁殖による増加は見込めない状況です。現在飼育されている2頭も高齢であるため、日本の水族館からラッコがいなくなる日は、残念ながらそう遠くない未来に迫っています。

日本における現在の生息数と野生回帰

水族館という「飼育下」では姿を消しつつあるラッコですが、一方で「野生下」では希望の光も見え始めています。北海道の東部、特に霧多布岬や根室半島、歯舞群島周辺の海域では、野生のラッコの目撃・定着が増えていることが知られています。

これらは北方(千島列島・北方領土周辺など)から来遊・分散してきた個体が含まれると考えられており、親子の行動が観察される例もあります。日本近海でラッコが見られるようになったことは、生物多様性の観点からは非常に注目される動きです。

しかし、この「野生回帰」は新たな社会問題も引き起こしています。それは「漁業被害」です。

天秤のイラストで表現された、野生ラッコの生態系回復によるメリットと漁業被害によるデメリットの対比図
北海道での野生ラッコ回帰と漁業被害のバランス
野生回帰のメリット野生回帰のデメリット(課題)
絶滅危惧種の個体数回復ウニやカニなどの海産物が食べられることによる漁業上の負担
観光資源としての価値向上観光客によるマナー違反や環境ストレスの増大
沿岸生態系のバランス回復定置網・漁具への接触などが起きた場合の物理的リスク

ラッコはウニや貝類、甲殻類などをよく食べるため、地元の漁業者にとっては無視できない課題になり得ます。一方で、ラッコは保全上重要な動物でもあるため、単純な対立ではなく、人間とラッコがどう共生していくかが現実的なテーマになっています。

愛らしい性格と環境変化への脆弱性

ラッコがお腹の上で貝を割ったり、流されないように昆布を体に巻き付けたりする姿は本当にかわいいですよね。しかし、彼らのこうした行動や身体の仕組みは、実はとても「繊細なバランス」で成り立っています。

アザラシやイルカなどの多くの海洋哺乳類は、冷たい海で体温を保つために分厚い皮下脂肪を持っています。しかし、ラッコは皮下脂肪が比較的少なく、その分、超高密度の毛皮で体温維持をしています。毛の本数は「1平方インチあたり最大100万本」と説明されることもあり、毛の間に空気の層を保つことで断熱材の役割を果たしています。

高燃費な身体の維持コスト

この仕組みには弱点があります。体温を維持するため代謝が高く、ラッコは一般に毎日体重の2〜3割前後(状況によってはそれ以上)のエサを食べる必要があります。もし餌が不足したり、病気やケガで採餌効率が落ちたりすると、衰弱のリスクが一気に高まります。

最大の弱点は「汚れ」

ラッコの密度の高い毛皮や代謝の仕組みを示す解剖図と、原油流出や鳥インフルエンザなどの現代の脅威
ラッコの身体的特徴と海洋汚染・感染症への脆弱性

ラッコが頻繁に体をこすっているのは、ただ綺麗好きだからではありません。毛皮が汚れたり油分で毛が束になったりすると、空気の層を保ちにくくなり、体が冷えやすくなります。その結果、低体温や衰弱、二次的な感染症など命に関わる状態へつながることがあります。つまり、原油流出事故のような海洋汚染は、ラッコにとって極めて深刻な脅威です。

シャチの捕食など新たな脅威の出現

さらに近年、自然界におけるパワーバランスの変化もラッコを脅かしています。特にアラスカなどの一部地域では、1990年代にラッコの個体数が急減した時期があり、その要因の一つとしてシャチによる捕食圧の増加が提案されています。

ただし、「なぜ捕食圧が増えたのか」については複数の仮説があります。捕鯨などにより大型の餌資源が変化したことが影響した可能性を指摘する説もありますが、地域差や他要因(生息環境の変化、栄養状態、病気など)も含め、単一の原因で説明しきれない可能性がある点は押さえておきたいところです。

また、日本国内においても警戒すべき事態が発生しています。2025年春、北海道東部で回収された野生ラッコの死骸から「高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)」が検出したと発表されました。感染経路はケースごとに不明な点が残るものの、同地域では海鳥・海棲哺乳類での確認が続いた時期があり、野生個体群にとって感染症は見過ごせないリスクです。

ラッコを絶滅危惧種から救う対策の全貌

ここまで厳しい現状をお伝えしてきましたが、世界中で多くの人々がラッコを守るために立ち上がっています。ここからは、法的な枠組みから具体的な保護活動、そして私たちが日常生活でできることまで、「対策」の全貌を詳しく解説します。

  • ワシントン条約などの法的規制による保護
  • 代理母プログラムによる画期的な取り組み
  • 寄付など私たちができることの具体例
  • 観光時の観察ルールとマナーの徹底
  • 生態系を守るブルーカーボンへの貢献
  • ラッコの絶滅危惧種対策と共生の未来

ワシントン条約などの法的規制による保護

まず、絶滅を防ぐための最も強力な盾となっているのが「法による規制」です。

国際的にはワシントン条約(CITES)により、ラッコの国際取引は管理下に置かれています。とくに南方(カリフォルニア)個体群はより厳格な扱い(商業取引の原則禁止)となり、その他の個体群も許可のない取引は認められません。さらに、主要な分布国の国内法(海棲哺乳類の保護法制など)によって捕獲や移送が厳しく制限されるため、展示目的での新規導入は現実的に極めて困難です。

日本国内では、環境省レッドリストでラッコは「絶滅危惧ⅠA類(CR)」と評価されています(※レッドリスト自体は法律ではなく“絶滅リスクの評価”です)。一方で捕獲等については、農林水産省所管の法律である「臘虎膃肭獣猟獲取締法」により、猟獲(捕獲)の禁止・制限や、獣皮や製品の製造・加工・販売の規制が定められています。より「絶滅危惧種(CR)」という区分の意味を整理したい場合は、同じカテゴリに指定される生き物の事例としてヤンバルクイナが絶滅危惧種となった理由と回復の動きも参考になります。

(出典:e-Gov法令検索『臘虎膃肭獣猟獲取締法』

代理母プログラムによる画期的な取り組み

アメリカのカリフォルニア州にある「モントレー・ベイ水族館」は、ラッコの保全活動において世界をリードしています。彼らが実施している中で最も画期的なのが「代理母プログラム(Surrogacy Program)」です。

これは、嵐などで親とはぐれて保護された赤ちゃんラッコを、人間が育てるのではなく、水族館で飼育されているメスのラッコ(代理母)に預けて育ててもらうというプロジェクトです。

なぜ人間が育ててはいけないのか?

赤ちゃんラッコを人の手だけで育てると、人間に慣れすぎてしまい、野生復帰後に適切な距離を保てなくなったり、採餌・グルーミングなどの行動が不十分になったりするリスクが指摘されています。代理母に育てられれば、食べ物の扱い方や身づくろい、仲間との距離感など、「ラッコとして生きるための学習」が進みやすく、野生復帰の質を高めることにつながります。

人間の手から保護された赤ちゃんラッコと、水族館のメスラッコが代理母として育てる様子の比較イラスト
米国モントレー・ベイ水族館のラッコ代理母プログラム

このプログラムを経て野生に放流された個体について、放流後の生存・定着が確認され、個体群の回復に寄与したとする報告もあります。水族館が単なる「見る場所」から「救護・回復・野生復帰を支える拠点」へと役割を広げた象徴的な事例といえるでしょう。

寄付など私たちができることの具体例

寄付、チャリティーグッズ購入、プラスチック削減、生活排水への配慮を示す4つのアイコン
ラッコを守るために私たちができる4つの支援アクション

「保護活動なんて、専門家じゃない私には無理…」と思う必要はありません。私たち一般市民にも、ラッコを守るためにできることはたくさんあります。

  • 保護団体への寄付・支援: 国内外にはラッコの保護・調査を支えるための寄付窓口があります。また、日本国内でも「寄付金付き商品」の売上の一部を保全活動へ回す取り組み(例:SAVE THE RACCOのようなプロジェクト)があります。支援する際は、寄付先・使途・実績を公式情報で確認するのが安心です。
  • チャリティーグッズの購入: 水族館や関連団体が販売している「寄付金付きのグッズ」や、売上の一部が支援に回るコラボ商品を選ぶのも一つの方法です。楽しみながら貢献できるのが良いところですね。
  • プラスチックごみの削減: 海に流出するプラスチックごみは、ラッコだけでなく全ての海洋生物の命を脅かします。マイボトルの利用やポイ捨てをしないといった日常の行動が、ラッコの住む海を綺麗にすることに直結します(参考:ウミガメが絶滅危惧種なのはなぜ?3つの原因と私たちができる対策)。
  • 生活排水への配慮: 洗剤は適量を守り、油や薬品類を流さないなど、沿岸環境への負荷を減らす意識も大切です(家庭の積み重ねが流域全体の水質に影響します)。

観光時の観察ルールとマナーの徹底

もしあなたが北海道などで野生のラッコを見に行く機会があったら、彼らの生活を脅かさないために、必ず守ってほしい「観察の作法」があります。現地自治体や観光・自然保護関係者が示すルールを確認したうえで、以下のマナーを心に留めておいてください(参考:イリオモテヤマネコが絶滅危惧種になった原因とは?事故や開発を解説)。

静かに見守る、距離を保つ、ドローン禁止、餌付け禁止を示すアイコンと注意書き
野生ラッコ観察時の4つのマナーと禁止事項

野生ラッコ観察の4つの約束

  • 静かに見守る:大声を出したり、走って近づいたりしないこと。
  • 距離を保つ:望遠レンズや双眼鏡を活用し、ラッコがこちらを気にするような距離(警戒距離)には絶対に入らないこと。
  • ドローンの使用禁止:頭上を飛ぶ物体は、猛禽類を連想させ、ラッコに強烈なストレスを与える恐れがあります。
  • 絶対に餌付けをしない:人間の食べ物の味を覚えさせると、人慣れや事故・トラブルの原因になります。

「かわいい写真を撮りたい」という気持ちは痛いほど分かりますが、私たちの都合で彼らを追い詰めてしまっては本末転倒です。「そっと見守る」ことこそが、最大の愛情表現であり、最も重要な保護活動なのです。

生態系を守るブルーカーボンへの貢献

最後に、少し視点を広げてみましょう。ラッコを守ることは、沿岸生態系の健全性を高め、結果として「炭素の吸収・固定(ブルーカーボン)」にも関係し得るという研究が注目されています。キーワードは「ブルーカーボン」です。

ラッコはウニをよく食べます。もしラッコの捕食圧が弱まると、天敵の少ないウニが増え、海藻群落(いわゆるケルプの森)を食べ尽くして「磯焼け」が進むことがあります。

海藻群落は光合成によりCO2を取り込み、生態系の生産力を高めます。ラッコがウニを適度に食べることで海藻群落が維持されやすくなり、沿岸域の炭素固定にプラスに働く可能性が示されています(研究によって推計の幅はありますが、“生態系の回復が炭素循環にも波及する”という視点は重要です)。

ラッコがウニを食べることで海藻(ケルプ)の森が守られ、CO2吸収(ブルーカーボン)が促進されるサイクルの図解
キーストーン種としてのラッコとブルーカーボンへの貢献

つまり、ラッコはただ可愛いだけでなく、海の森を支える存在として、気候変動に向き合う議論ともつながる動物だといえます。

ラッコの絶滅危惧種対策と共生の未来

ここまで、ラッコの現状と対策について詳しく見てきました。

日本の水族館からラッコが姿を消しつつある現実は、私たちにとって非常に寂しいものです。しかし、それは同時に、動物を「消費」する時代から、本来あるべき場所で「共生」する時代へと、私たちの意識をアップデートするタイミングが来ていることを示しているのかもしれません。

野生での目撃・定着が進む中で、漁業との摩擦や感染症といった解決すべき課題は山積みです。それでも、代理母プログラムのような科学的なアプローチや、私たち一人ひとりの環境意識の変化が、確実に希望の光を灯しています。

ラッコを守ることは、豊かな海を守ることであり、私たちの未来を守ることでもあります。まずは現状を知り、周りの人に伝え、できることから始めてみませんか?その小さな一歩が、ラッコたちとの新しい未来を作る力になると、私は信じています。

※本記事の情報は執筆時点のものです。野生生物の観察ルールや寄付先の詳細については、各自治体・施設・団体の公式サイトで最新情報を必ずご確認ください。

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この記事を書いた人

はじめまして、管理人の「零(れい)」です。 このブログ「まっさらログ」にお越しいただき、本当にありがとうございます。
ここは、日常で感じたことや新しく始めたことを、「まっさら」な視点で記録していく雑記ブログです。

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