みなさんはYouTubeやニコニコ動画を見ていて、サカナクションの「新宝島」が使われた面白動画や、あの独特なステップを真似した投稿に出会ったことはありませんか?
2015年のリリースから数年が経過しているにもかかわらず、なぜ「新宝島」ばかりがこれほどまでにネット上でネタにされる理由があるのか、そして一部で囁かれる「パクリ」や「元ネタ」といった噂の真相はどうなのか、気になっている方も多いはずです。
実は私も最初は「なんでこの曲だけこんなにいじられているんだろう?」と不思議に思っていました。しかし、ネット上では「ドリフ」や「頭文字D」との関係がまことしやかに語られたり、「丁寧」という歌詞の意味や「嫌い」という評価について熱い議論が交わされていたりと、掘れば掘るほど奥が深い現象なんですよね。
今回は、あの印象的なミュージックビデオ(MV)に隠された秘密や、ネットで愛され続けるステップの誕生背景、そして意外な漫画作品との関係まで、私なりに徹底的に調べた情報を整理して、その面白さの正体に迫っていきたいと思います。
- 昭和のバラエティ番組をオマージュした映像演出に隠された計算
- 「丁寧丁寧丁寧」という歌詞に込められた制作意図とリズムの中毒性
- ネット上で「ドリフト」動画と融合してしまった意外すぎる経緯
- 手塚治虫作品との関係やパクリ疑惑に対する明確な答え
サカナクションの新宝島がネタにされる理由とMVの秘密
まず、この曲がここまでネットのおもちゃ(もちろん良い意味で!)として長く愛されるようになった最大の要因は、間違いなくあのミュージックビデオ(MV)のインパクトにあります。一見すると「これ、ふざけているのかな?」と思ってしまうような昭和レトロな演出や、メンバー全員による無表情なパフォーマンスには、実は緻密な計算と、制作側の遊び心が隠されているんです。ここでは、映像の中に意図的に仕掛けられた「ツッコミどころ」を一つずつ紐解いていきましょう。
- ドリフへのオマージュかパクリか元ネタを徹底検証
- 独特なステップと振り付けが生むシュールな面白さ
- 丁寧という歌詞の意味と耳に残るリズムの正体
- チアガールや真顔の演出が作り出す視覚的な違和感
- 昭和レトロなセットとアスペクト比の意図的な仕掛け
ドリフへのオマージュかパクリか元ネタを徹底検証

MVを見た瞬間に「これ、どこかで見たことある!」と強烈なデジャヴを感じた昭和世代の方も多いのではないでしょうか。そう、あの書き割りのようなセットや、原色のネオン、そしてオープニングの演出は、昭和の歌番組やバラエティ番組の空気感を強く想起させます。ネット上では「ドリフ大爆笑」など“ドリフっぽさ”を連想する声が多いのも、この「いかにも昭和のテレビ」な質感が徹底しているからなんですよね。
ネット上では「パクリではないか?」なんて検索されることもありますが、少なくともMVの制作意図としては、悪意ある盗作というより昭和のテレビ表現へのオマージュ(敬意を持った参照)として受け止めるのが自然です。実際、このMVはサカナクション作品を多く手がける映像ディレクターの田中裕介氏が監督を務め、昭和の歌番組・バラエティ番組をオマージュしたレトロなセットや仕掛けが象徴的だと公式側でも紹介されています。
ここがポイント 現代の高画質な映像技術を使えばリアルなセットも組めるはずです。しかし、あえてベニヤ板の質感が伝わるような「安っぽい」セットを作ることで、視聴者に「あえてやっている違和感」を与えています。これが「パクリ」という批判を超えて、「再現度の高いネタ」としてネットユーザーに受け入れられた理由ですね。
本気の大人が本気のお金と技術を使って「昭和テレビ的な世界観」を再現しようとした結果、そのギャップが今の若い世代には「一周回って新鮮な面白さ」として、当時を知る世代には「懐かしい面白さ」として刺さったわけです。
独特なステップと振り付けが生むシュールな面白さ

「新宝島」といえば、サビの部分でメンバー5人が横一列になって踏む、あの独特なステップですよね。「右、左、右、左」と交互に足を出して進むだけの単純な動きなんですが、これがなぜか一度見ると頭から離れません。
この振り付け(振付稼業air:manが担当)の最大のミソは、「全員が徹底して真顔であること」です。通常、アイドルのダンスやロックバンドのパフォーマンスといえば、笑顔だったり、クールで情熱的な表情だったりするものですが、彼らはまるでプログラミングされたロボットのように無表情でリズムを刻み続けます。この「シュールレアリスム」的な絵面が、TikTok(TikTokでダンス動画がバズる要因の考察)やTwitter(現X)などで「真似してみた動画」として拡散される大きな要因になりました。
また、ダンス未経験者でも数回見ればすぐに真似できる「ハードルの低さ」も、ネットスラング『激おこぷんぷん丸』から見るミーム文化のように「誰でも乗れる型」があるからこそ爆発しやすい、ミーム(ネットで流行るネタ)として広まるためには必要不可欠な要素だったといえます。
丁寧という歌詞の意味と耳に残るリズムの正体

映像だけでなく、一度聴いたら耳に残って離れない歌詞もネタにされる要因の一つです。特にサビで繰り返される「丁寧に…」というフレーズ。ネット上では省略して「丁寧 丁寧 丁寧」と呼ばれることもあり、ロックバンドのサビでここまで日常的な単語が強く印象に残るのは、たしかに珍しいですよね。
この歌詞については、映画『バクマン。』の主題歌として制作され、作品の核である「線を描く」「ものづくり」といったテーマと響き合っている、という文脈で語られることが多いです。実際、「新宝島」は2015年9月30日発売のシングルで、映画『バクマン。』(2015年10月3日公開)の主題歌として案内されています。(出典:サカナクション公式サイト「11th Single『新宝島』」)
ただ、山口一郎さんの作詞は意味だけでなく「音の響き(グルーヴ)」の強さも肝で、「テイネイ」という音が持つパーカッシブなリズム感が、速いテンポの楽曲にピタリとハマっているのも大きいポイントです。
ネット上ではこのフレーズが大喜利のように扱われ、いわゆるネット文章テンプレ(「おじさん構文」とは?例文・心理・対処法の完全解説)と同じく「決まった型に当てはめて遊ぶ」方向に転がりやすくなりました。「丁寧な暮らし」「丁寧な梱包」「丁寧な煽り」など、言葉遊びの素材としても大人気になりました。「意味は深く考えなくても、口に出して言いたくなる」という中毒性が、この曲の強みです。
チアガールや真顔の演出が作り出す視覚的な違和感

MVの後半に進むと、メンバーの後ろにスクールメイツを彷彿とさせる大量のチアダンサーが登場し、ラインダンスを披露します。「え、なんでロックバンドのMVでここでチアガール?」とツッコミを入れたくなりますが、この「文脈のなさ(唐突さ)」こそが演出の狙いです。
バンドメンバーは相変わらず真顔でステップを踏み続け、後ろでは満面の笑みのチアダンサーが踊っている。この情報の渋滞具合と温度差が、視聴者の脳を混乱させ、「なんかよく分からないけど面白いものを見た」という強烈な印象を残します。
真面目な顔をしてふざけたことを全力でやる、という「大人の悪ふざけ」感が、ネットユーザーの「いじりたくなる心理」を刺激し、スクリーンショットやGIF画像として拡散される原動力となりました。
昭和レトロなセットとアスペクト比の意図的な仕掛け
少しマニアックですが、MVの画面サイズ(アスペクト比)にも面白い仕掛けがあります。冒頭部分は、昔のアナログテレビのような正方形に近い「4:3」の画面で始まり、サビに入った瞬間に現代的な「16:9」のワイド画面にグッと広がるんです。
これによって、イントロ部分は「過去の映像(昭和のテレビ)」のように見え、サビで一気に「現代のサカナクションの音楽」として開放感が出る演出になっています。実はこれ、動画編集をして遊ぶ人たちにとっても、この「画面が広がるタイミング」が音ハメ(音楽に合わせて映像を切り替えること)をしやすく、MAD動画(編集動画)の素材として非常に使い勝手が良かったと言われています。
編集目線での面白さ 「ここから盛り上がりますよ!」という合図が映像自体に組み込まれているようなものなので、二次創作を作るクリエイターにとっても遊びやすい構造になっているんです。
動画サイトで新宝島がネタにされる理由と拡散の背景
MVの作り自体が面白いのはもちろんですが、それがネット上でどのように料理され、拡散されていったかという点も重要です。ここからは、ユーザーの手によって予想外の進化を遂げた「新宝島」の軌跡を追っていきます。
- 頭文字Dやドリフト動画と融合した意外なきっかけ
- ニコニコ動画でMAD素材として愛される使いやすさ
- 嫌いという評価を超えて愛されるミーム化の構造
- 手塚治虫の漫画がタイトルの由来となった深い背景
- サカナクションの新宝島がネタにされる理由のまとめ
頭文字Dやドリフト動画と融合した意外なきっかけ

ネット上には「新宝島」と、走り屋漫画の金字塔『頭文字D(イニシャル・ディー)』のアニメ映像や、レースゲームの映像を組み合わせた動画が大量に存在します。なぜ音楽バンドと車のドリフト走行が関係あるのか不思議ですよね。
これには諸説ありますが、MVのイントロで山口一郎さんが横移動する動きが「車がコーナーを攻めるドリフト走行に見える」と言われたり、そもそも「ドリフ(番組)」と「ドリフト(走行)」という言葉の響きが似ているからという、ダジャレのような理由で結びついたという説もよく見かけます。
しかし、実際に映像を合わせてみると、この曲の速いテンポ感が疾走感のあるレース映像に妙にマッチしてしまい、「違和感がないのが違和感」という新たな笑いを生みました。これがきっかけで、音楽ファンだけでなく車好きのコミュニティにまでこの曲が広まったのは、非常に面白い現象です。
ニコニコ動画でMAD素材として愛される使いやすさ
ニコニコ動画などの動画投稿サイトでは、既存の映像を加工して遊ぶ「MAD動画」という文化があります。「新宝島」のMVは背景が書き割りでシンプル、かつメンバーの動きも横移動がメインなので、映像編集ソフトでの「切り抜き(合成)」が非常にやりやすかったんです。
その結果、人気アニメのキャラクターに新宝島ステップを踏ませたり、逆にサカナクションのメンバーを全く違うアニメの風景の中に登場させたりと、素材としての汎用性が高すぎました。「丁寧」というフレーズも、どんな状況にも当てはめやすいので、ネタ動画のBGMとして定着していったんですね。
嫌いという評価を超えて愛されるミーム化の構造
実はリリース当初、従来のサカナクション(文学的、内省的でおしゃれなロック)のイメージが強かったこともあり、受け止め方が割れて賛否が出た、という語られ方をすることがあります。
しかし、バンド側が「より多くの人に届く形で提示する」「ポップの文法で提示する」といった方向に舵を切ることで、結果としてネットでネタにされる形でも普段ロックを聴かない層にまで届き、ライブでは会場全員がステップを踏むような一体感のあるキラーチューンに成長しました。
賛否両論あることを覚悟の上で振り切った結果、それが「いじってもいい公式の空気感」を作り出し、ミームとして愛される土壌になったのだと思います。アーティストが意図的に作った「隙」に、ネットユーザーが全力で乗っかった形ですね。

アーティストの懐の深さ 山口一郎さん自身も、自身の楽曲がネット上で多様に消費される状況を、肯定的に受け止めているように見える発言がたびたび話題になります。公式がこの状況を楽しんでいる空気があるからこそ、ファンも安心して遊べるという関係が築かれやすいのかもしれません。
手塚治虫の漫画がタイトルの由来となった深い背景
最後に、ネタとしてだけでなく、作品としての深みについても触れておきましょう。「新宝島」というタイトルは、手塚治虫が作画を担当した赤本マンガ『新寳島』(1947年、構成は酒井七馬)に由来するとされています。映画『バクマン。』が漫画家を目指す若者たちの物語であることから、漫画表現の歴史を象徴する作品名を重ねた、という文脈で語られることが多いんです。
MVは昭和の歌番組・バラエティ文化へのオマージュ、タイトルは昭和の漫画文化を想起させる言葉。こうして見ると、単にふざけているだけでなく、日本のポップカルチャーの歴史を背負った上で遊んでいることが分かります。「パクリ」なんて言葉で片付けるにはもったいない、文脈があるんですね。
(出典:手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL『新寳島』作品紹介)
サカナクションの新宝島がネタにされる理由のまとめ

今回は、サカナクションの「新宝島」がネットでネタにされ続ける理由について深掘りしてきました。
- ドリフ番組を含む昭和テレビ文化を想起させる愛あるオマージュが、懐かしさと現代的な違和感を生んだ。
- 「丁寧」というフレーズの響きと、真顔のステップがシュールで中毒性が高い。
- 「ドリフ」と「ドリフト」の連想などから、車動画との謎の融合が起きた。
- 映像素材としての使いやすさが、MAD動画文化と奇跡的にマッチした。
一見すると「面白いネタ動画」として消費されているように見えますが、その裏にはバンドの高い音楽性と、映像作家の緻密な設計、そしてネットユーザーの遊び心が複雑に絡み合っています。だからこそ、一発屋のネタで終わらず、何年経っても愛される「名作ミーム」になったのかもしれません。
もしまた動画サイトで「新宝島」を見かけたら、今度はその背景にある演出やこだわりにも注目して見てみてください。きっと今まで以上に「丁寧」に笑えるはずですよ!

