料理中やちょっとした掃除の時、キッチンペーパーを切らしていることに気づく瞬間、ありますよね。目の前にティッシュがあると、「これで代用できないかな?」と考えるのは自然なことだと思います。
特に、急いで揚げ物の油切りをしたい時や、野菜の水切りが必要な時、ティッシュでいいか迷うかもしれません。また、電子レンジでの使用に関する安全性や、そもそも料理に使うこと自体が大丈夫なのか、気になるところですよね。ティッシュの箱には「食品用」とは書いてないですし、なんとなく不安に思うのは正しい感覚だと思います。
結論から言うと、キッチンペーパーの代用としてティッシュを使うのは、用途をかなり限定すべき、というのが私の考えです。安易に使うと、料理が台無しになるだけでなく、思わぬ危険もあるかもしれません。
この記事では、なぜティッシュの代用が推奨されないのか、その具体的な理由と、もし使う場合の安全な(限定的な)用途、さらにはティッシュよりもずっと優秀な代用品について、詳しく掘り下げていこうと思います。
- ティッシュを料理に使う際の危険性
- ティッシュが安全に使える限定的な用途
- キッチンペーパーとクッキングペーパーの違い
- ティッシュ以外のおすすめ代用品
キッチンペーパーの代用とティッシュの危険性
キッチンペーパーの代用にティッシュを使いたい、その気持ちは分かります。でも、特に「料理」に使うことには、いくつか知っておくべき危険性があるんです。なぜ推奨されないのか、具体的な理由を掘り下げてみますね。主に「化学的な安全性」「火災の危険性」「物理的な強度」の3つのポイントが挙げられます。
ティッシュの安全性と蛍光増白剤のリスク

まず一番気になるのが、化学的な安全性ですよね。目に見えない部分なので、一番注意が必要かもしれません。
私たちが普段使っているティッシュペーパーって、基本的には肌(顔とか)に触れる前提で作られています。鼻をかんだり、口を拭いたり。でも、食品に触れること、ましてや加熱調理に使うことは想定されていないんです。
一方で、キッチンペーパーや紙ナプキンの中でも、食品に直接触れるものは「食品衛生法」というルールに沿って作られている必要があります。(参照:厚生労働省「食品用器具・容器包装の基準」)
この法律で問題になるのが「蛍光増白剤(けいこうぞうはくぞい)」です。
蛍光増白剤ってなに?
蛍光増白剤は、紫外線を吸収して青白い光に変えることで、紙や布を「より白く」見せるための染料です。再生紙の黄ばみを隠したり、新品の白さを際立たせたりするために使われます。
ティッシュペーパーの多くは、この「見た目の白さ」を重視しているため、蛍光増白剤が使われている製品も少なくありません。しかし、食品に触れる紙製品については、この蛍光増白剤の使用が原則として認められていません。(出典:厚生労働省『蛍光物質を使用した器具又は容器包装の検査法について』)
化学物質が食品に移るかも?
蛍光増白剤だけでなく、ティッシュによっては紙を柔らかくするための柔軟剤や、香り付きのもの(保湿成分入りのしっとりタイプなど)もありますよね。
これらが熱い揚げ物や、水分・酸味のある野菜(トマトなど)に触れると、化学物質が食品に溶け出してしまう(移行する)リスクがゼロではない、ということです。これが料理への使用をおすすめしない最大の理由ですね。
ティッシュをレンジで使うと発火する?
「ティッシュ レンジ 発火」と検索されることもあるようですが、これは絶対にやめたほうがいいです。本当に危険だと思います。
そもそも、「キッチンペーパー」でさえ、電子レンジでの使用には注意が必要です。(参照:“Microwave oven fire safety” Fire & Rescue NSW)
水分が少ない食材(例えば少量の野菜や、油分の多いもの)と加熱すると焦げやすく、発火の可能性がありますからね。特に電子レンジのオーブン機能(200℃以上になる)での使用は、燃える可能性があるので厳禁です。
なぜティッシュは特に危険なのか
ティッシュペーパーは、キッチンペーパーよりもずっと薄く、繊維も粗く、空気を含みやすい構造です。つまり、非常に燃えやすい素材なんです。
電子レンジのマイクロ波は、食品の「水分」を振動させて熱を発生させますが、水分が極端に少ない部分(乾いたティッシュペーパーなど)にエネルギーが集中すると、急激に温度が上昇し、あっという間に発火点に達する可能性があります。(参照:“Possible hazards in heating microwavable products” Schiffmann (研究資料))
【厳禁】レンジでの使用は火事のもと
ティッシュをレンジで加熱することの安全性データが少ないのは、「安全性が未確認」なんじゃなくて、「危険なのが当たり前だから調理用途として想定されていない」と考えるのが自然かなと思います。
「ちょっとだけなら」という油断が、重大な火災事故につながる可能性があるので、解凍や加熱にティッシュを使うのは絶対にやめましょう。
揚げ物の油切りにティッシュは使える?

揚げ物の油切り、これはティッシュを使いたくなる代表的なシーンかもしれません。でも、ここにも大きな問題があります。それは「強度」の問題です。
ティッシュって、水には溶けにくい(トイレに流すと詰まる理由ですね)んですが、熱や油、絞る力にはすごく弱いんです。
繊維が付着するリスク
熱い揚げたてのコロッケや天ぷらを、ティッシュの上に直接乗せたと想像してみてください。ティッシュは熱と油で繊維がほぐれて、食材の衣にベッタリと紙がくっついてしまう可能性が非常に高いです。
これだと、さっき話した化学物質のリスクに加えて、「紙の繊維そのもの」を食品と一緒に食べてしまうことになります。これはもう「異物混入」ですよね。せっかく美味しく揚がったのに、台無しになってしまいます。
どうしてもティッシュしかない時の緊急策
もし、本当にティッシュしかなくて、どうしても油切りが必要な場合は、「食品に一切触れさせない」工夫が必要です。
- 耐熱皿やバットを用意します。
- その上にティッシュペーパーを数枚、敷き詰めます。
- ティッシュペーパーの上に必ず「網(クーリングラックや天ぷらバットの網)」を置きます。
- 揚げた食材は、ティッシュではなく「網の上」に置きます。
これなら、食材から滴り落ちる油は下のティッシュペーパーが吸収しますが、食材がティッシュに触れることはありません。あくまで緊急避難的な方法ですが、直接乗せるよりはずっと安全ですね。
野菜や豆腐の水切りには不向きな理由
野菜や豆腐の水切りも、ティッシュで代用したくなるかもですが、これもおすすめできません。理由はさっきの揚げ物と似ていて、やっぱりティッシュの強度の問題です。
例えば、洗ったほうれん草をティッシュで包んで、水気を切るためにギュッと絞ったらどうなるでしょう。十中八九、ティッシュは簡単に破れて、ほうれん草に紙の繊維がびっしり…なんてことになりかねません。
豆腐の水切りで包んで重しを乗せても、豆腐の水分でティッシュがふやけてしまい、豆腐に貼り付いてしまいます。これを取り除くのはかなり大変です。
ましてや、だしこしやスープこしなんてもってのほかで、熱い液体の重みで破れて鍋の中にティッシュが散乱、大惨事になるのが目に見えています。
水切りやだしこしには、ティッシュは使わない方が賢明ですね。
掃除や拭き取りにはティッシュが便利
ここまで料理にはNGと厳しめに話してきましたが、もちろんティッシュが役立つ場面もあります。それが「掃除・拭き取り」です。
これは「食品に直接触れない」用途なので、蛍光増白剤などの安全性も気にする必要はありません。
ティッシュが得意な「拭き掃除」の例
- コンロ周りにこぼれた醤油やみりん、油などの調味料の拭き取り
- 調理台に飛び散った小麦粉やパン粉などの乾いた汚れ
- 食卓の食べこぼしや飲みこぼしの清掃
- 使用後のフライパンや鍋、カレー皿などに残った油汚れやソースの「予洗い」としての拭き取り(※食品が残っていない状態)
- 醤油さしやドレッシングのボトルの口の液だれ拭き
こうした「拭き掃除」の用途なら、ティッシュはキッチンペーパーの優秀な代用品になると思います。これはティッシュ本来の「拭き取る」機能の延長線上にありますし、むしろキッチンペーパーを使うのがもったいない場面でもあります。どんどん活用していいところですね。
キッチンペーパーの代用にティッシュ以外の案
ティッシュペーパーが料理には使いにくいことが分かりました。じゃあ、キッチンペーパーがない緊急事態に、ティッシュ以外のどんなものが代用品になるんでしょうか。ここからは、より安全で優秀な代用品を用途別に見ていきたいと思います。
クッキングペーパーとの決定的な違い

代用品の話の前に、非常に重要な豆知識です。
ひとくちに「キッチンペーパー」と言っても、実は市場には大きく分けて2種類の製品があるってご存知でしたか?(参照:“Can You Microwave Paper Safely? What You Need to Know” Armadillo)
この違いを理解すると、ティッシュがなぜ代用にならないかハッキリします。
エンボス加工 vs フェルト状
①キッチンペーパー (Kitchen Paper)
私たちがよく想像する、表面にデコボコしたエンボス加工が施されているロールタイプです。吸水性・吸油性が高いのが特徴で、掃除や食器拭き、野菜の一時的な水分の拭き取りが得意。ただし、熱に弱い製品も多く、本格的な調理(だしこし、落とし蓋、電子レンジ調理)には向かないものが多いです。ティッシュが代用できるのは、この「掃除用」の機能(拭き取り)の部分ですね。
②クッキングペーパー (Cooking Paper)
「リード クッキングペーパー」に代表されるような、表面にデコボコがなく、フェルト状(不織布)に加⼯されている厚手で丈夫なタイプです。水にも油にも熱にも強く、調理全般(水切り、油切り、だしこし、油こし、落とし蓋、アク取り、電子レンジ調理)まで万能にこなします。
もし皆さんが「調理」のためにティッシュを代用しようとしているなら、それは本来②の「クッキングペーパー」の役割を求めていることになります。ティッシュでは強度も耐熱性も安全性も、まったく代わりにならないんですね。
| 用途 | ティッシュ | キッチンペーパー (エンボス加工) | クッキングペーパー (フェルト状) |
|---|---|---|---|
| 拭き掃除 | ◎ (最適) | ○ (可) | △ (高価) |
| 揚げ物の油切り | × (不可) ※網の上なら可 | ○ (可) | ◎ (最適) |
| 野菜・豆腐の水切り | × (不可) ※破れる | △ (絞るのには不向き) | ◎ (最適) |
| だしこし・油こし | × (不可) ※破れる | △ (破れやすい) | ◎ (最適) |
| 落とし蓋 | × (不可) ※溶ける | × (不可) | ○ (可) |
| 電子レンジ加熱 | × (危険・発火) | △ (製品による・注意) | ◎ (最適) ※製品表示確認 |
油こしはコーヒーフィルターが最適
使った油を保存するために濾過する「油こし」。この代用として、ティッシュは熱い油で破れやすくて危険ですが、「コーヒーフィルター」が意外と使えます。
目がすごく細かいので、微細な揚げカスまでしっかりキャッチしてくれます。油がクリアになるのは嬉しいポイントですね。ただ、目が細かすぎて濾過にすごく時間がかかるのが難点かも。
もちろん、安全のために茶こしやザルの上にコーヒーフィルターをセットして、ゆっくり油を注ぐようにしてくださいね。
油切りにトイレットペーパーは使える?
揚げ物の油切りで、ティッシュはNG(網の上ならOK)と話しましたが、意外な代用品として「トイレットペーパー」があります。
「えっ」と思うかもしれませんが、実は理にかなっています。ただし、これには絶対に守るべき条件があります。
【絶対条件】無香料・プリントなしであること
トイレットペーパーを使う場合は、必ず「無香料(香り付きでない)」で「プリント(インク)なし」の、真っ白な再生紙ではない(できればピュアパルプの)ものを選んでください。
香りやインクが食品に移るリスクは、ティッシュの蛍光増白剤のリスクと同じように避けるべきです。この条件さえクリアすれば、紙ナプキンと同じように油切りとして使えそうですね。とはいえ、やはり抵抗がある方も多いと思うので、最終手段と考えたほうがいいかもしれません。
それよりは、ファストフード店などでもらう「紙ナプキン」が家にあれば、そちらの方が吸油性も高く、代用品として適しています。
落とし蓋はアルミホイルで代用可能
煮物を作るときの「落とし蓋」。これはもう、紙製品に頼る必要はまったくないですね。家にあるもので簡単に代用できます。
一番手軽なのは「アルミホイル」や「クッキングシート(オーブンシート)」です。
これらを鍋の大きさに合わせて切り、煮汁が対流できるように中央に数カ所穴を開ければ、立派な落とし蓋になります。アクも一緒に取れたりするので便利ですよね。
紙以外の代用品
もちろん、モノで代用する手もあります。
- 鍋より一回り小さい耐熱性の平皿
- 鍋より一回り小さい鍋のフタ(取っ手を下にして置く)
また、シチューや煮込み料理の場合は、キャベツや白菜の一番外側の葉(硬くて捨ててしまいがちな部分)をかぶせることで、野菜の水分と旨味も加わる、自然な落とし蓋として機能してくれますよ。
万能な代用品「さらし木綿」とは

ここまで色々な「使い捨て」の代用品を紹介してきましたが、私が個人的に一番おすすめしたい恒久的な対策は、「さらし(晒)木綿」をキッチンに常備することです。
さらしは、昔ながらの木綿の布ですが、これが本当に万能なんです。
「さらし木綿」のすごいところ
- 熱に非常に強い: 沸騰した出汁を直接こしても破れません。蒸し料理の敷き布にも最適です。
- 丈夫で経済的: 洗って何度も繰り返し使えます。環境にも優しく、長い目で見ればとても経済的です。
- 多用途: 野菜や豆腐の水切り(ギュッと強く絞れる)、だしこし、スープこし、ヨーグルトの水切り、食器の拭き上げまで、これ一枚でOKです。
さらしのお手入れ方法
「布巾は衛生面が心配」と思うかもしれませんが、お手入れは簡単です。
- 使った後は、食器用洗剤で軽く手洗いします。
- 汚れやニオイが気になってきたら、鍋で煮沸消毒します(5分ほど)。
- 清潔な場所で、しっかり天日干しして乾かします。
ティッシュで代用できるか悩むよりも、この機会に「さらし」のような、安全で長く使える日本の伝統的な道具を見直してみるのも、キッチンライフが豊かになって良いかなと思います。
キッチンペーパーの代用とティッシュの結論
「キッチンペーパーの代用はティッシュでOK?」という疑問について、改めて私の考えをまとめます。
結論としては、「掃除・拭き取り」にはOK、でも「料理(調理)」への使用はNG、というのが安全で賢明な判断かなと思います。
ティッシュ代用のOK/NGまとめ
- 【OK】掃除・拭き取り コンロ周りの汚れ、食器の予洗いなど、食品に触れない用途。
- 【NG】料理・調理 理由は、蛍光増白剤などの化学物質が食品に移るリスク、熱や水で破れて繊維が付着する(異物混入)リスクがあるため。
- 【厳禁】電子レンジでの使用 発火・火災の危険性が極めて高いため、絶対にやめてください。
緊急時には、ティッシュではなく「コーヒーフィルター」(油こし)、「紙ナプキン」や「(条件付きで)トイレットペーパー」(油切り)、「アルミホイル」(落とし蓋)など、より安全な紙製品や道具を選んでみてください。
そして、これを機に「さらし木綿」のような、洗って繰り返し使える万能な調理器具をキッチンに導入することを、私は強く推奨します。これは、熱にも強度にも優れ、あらゆる調理シーンで安全かつ高いパフォーマンスを発揮してくれますよ。
安全に関するご注意
この記事で紹介した情報は、あくまで一般的な知識や私の見解に基づいています。特に化学物質の安全性や火災のリスクについては、各製品の表示をよく確認し、ご自身の責任において最終的に判断してください。
少しでも不安がある場合は、メーカーの公式サイトで情報を確認するか、使用を避けるのが最も安全な選択だと思います。
安易な代用は、料理の味を損ねるだけでなく、思わぬ健康被害や事故につながるリスクも伴います。正しい知識を持ち、適切な道具を選ぶことが、安全で快適なキッチンライフの第一歩ですね。

