愛猫との暮らしは幸せなものですが、好奇心旺盛な猫ちゃんにとって、キッチンは魅力的な冒険場所であると同時に、危険がいっぱいのエリアでもあります。ゴミ箱をひっくり返して誤食してしまったり、コンロの火や包丁などの刃物に触れてしまったり、あるいは網戸を突き破って脱走してしまったり……。
こうした事故のリスクを考えると、飼い主としては一時も気が抜けませんよね。特に賃貸マンションやアパートにお住まいの方だと、「壁に穴を開けられないから、しっかりしたゲートが付けられない」「狭いキッチンだから、市販のペットフェンスを置く場所がない」といった住環境ならではの悩みに直面し、どう対策すればいいのか途方に暮れてしまうことも多いのではないでしょうか。
でも、諦める必要はありません。実は、ダイソーやセリア、キャンドゥといった身近な100均ショップで手に入るアイテムを組み合わせるだけで、賃貸でも設置可能で、かつ猫の侵入をある程度しっかり防げる安全対策をDIYすることが十分に可能なのです。
高額なリフォームや専用グッズに頼らなくても、ワイヤーネットや突っ張り棒、そしてちょっとしたアイデアがあれば、猫が登るのを防いだり、器用に扉を開けるのを阻止したりする「鉄壁の守り」に近い環境を構築できます。この記事では、私自身が試行錯誤を重ねてたどり着いた、低コストかつ効果的な猫のキッチン対策のノウハウを、注意点も交えながらお伝えします。
- 賃貸物件でも壁を傷つけずに設置できる自作ゲートの作り方と強度アップのコツ
- ワイヤーネットや突っ張り棒を駆使した、猫の侵入を物理的にシャットアウトするDIY術
- ゴミ箱荒らしやコンロの誤作動など、場所ごとのリスクを減らす具体的な100均活用テクニック
- ダイソーやセリアなどのアイテム選びで失敗しないためのポイントと安全管理の基本
賃貸でも安心な猫のキッチン対策は100均でDIY
賃貸住宅で猫と暮らす私たちにとって最大の課題は、「原状回復義務」です。どれほど完璧な対策でも、退去時に高額な修繕費を請求されるような方法は選べません。しかし、だからといって安全を妥協することもできませんよね。ここでは、壁や床を傷つけることなく、かつ猫の力にも耐えうる強固なゲートを作るための100均DIYテクニックを深掘りしていきます。賃貸全般の原状回復ルールや畳の凹み・カビ対策について詳しく知りたい方は、賃貸の畳にベッド!ニトリで凹み防止とカビ対策を完全攻略も参考になります。
壁を傷つけない自作ゲートのアイデア

市販のペットゲートは設置が簡単な反面、壁に強い圧力をかけて固定するため、長期間使用すると壁紙が凹んだり剥がれたりするリスクがあります。また、規格サイズが合わず、微妙な隙間ができてしまうことも。そこで活躍するのが、100均アイテムを駆使した「壁に優しいDIY」です。
私が推奨する組み合わせは、「マスキングテープ」+「強力両面テープ」+「補助板」のサンドイッチ工法、もしくは「耐震ジェルマット」の活用です。いずれの方法も「直接壁紙に負担をかけない」ことを意識すると、賃貸でも取り入れやすくなります。
耐震ジェルマットで強度と保護を両立
突っ張り棒を使用する場合、そのまま壁に当てるのはNGです。棒の先端と壁の間に、ダイソーやセリアで売っている厚手の「耐震ジェルマット」を必ず挟んでください。
耐震ジェルマットの効果:
- 摩擦係数の向上: ジェルの粘着性により、猫が体当たりしてもズレにくくなります。
- 衝撃吸収: 突っ張り棒の圧力を分散させ、壁へのダメージ(凹み)を防ぎます。
粘着アイテムを使う際の下地処理
もし、ワイヤーネットを固定するためのフックなどを壁に貼り付けたい場合は、以下の手順で下地処理を行いましょう。
- 壁の汚れをきれいに拭き取る。
- 貼り付けたい場所に、広めに「マスキングテープ」を貼る。
- その上から強力な粘着テープやフックを取り付ける。
こうすることで、剥がすときはマスキングテープごとペリッと剥がせるため、壁紙を傷めるリスクを抑えられます。これは賃貸DIYの基本中の基本テクニックです。
ワイヤーネットと突っ張り棒で作る侵入防止柵

これぞ「猫 キッチン対策 100均」の王道です。キッチンの入り口を物理的に塞ぐゲートを自作します。所要時間は目安として30分程度、費用もおおよそ1000円〜2000円程度で済むケースが多いでしょう(購入するサイズや点数によって変わります)。
用意するもの
- 突っ張り棒(床から天井まで届く長いタイプ推奨)×2本
- ワイヤーネット(必要な高さをカバーできる枚数)
- 結束バンド(インシュロック)
- ダブルクリップ または 自転車用ゴム紐(ロック用)
制作手順
まず、キッチンの入り口の両端に突っ張り棒を垂直に立てます。この時、前述の耐震ジェルマットを忘れずに挟んでください。次に、ワイヤーネットを結束バンドで繋ぎ合わせ、一枚の大きなフェンスにします。
ここからがポイントです。フェンスの片側だけを、突っ張り棒に結束バンドで固定します。この時、「ガチガチに締めすぎず、少し余裕を持たせて輪っかを作る」ようにしてください。こうすることで結束バンドが蝶番(ヒンジ)の役割を果たし、ネットがドアのように開閉できるようになります。
猫の「登り」対策を忘れずに!
ワイヤーネットは格子状になっているため、猫にとっては「ハシゴ」のようなものです。よじ登って突破されるのを防ぐため、ネットの上部(猫の手が届く高さ)に「PPシート」や「下敷き」を貼り付け、爪が引っかからないツルツルの面を作っておきましょう。
ダイソーやセリアで揃う手作りフェンスの素材
100均ショップならどこでも同じと思っていませんか? 実は、店舗によって取り扱っているワイヤーネットや関連グッズの特性が異なります。目的に合わせて使い分けるのが成功への近道です。
| ショップ | 特徴とおすすめアイテム |
|---|---|
| ダイソー | 「サイズと種類の豊富さが最強」 200円〜500円商品のラインナップが充実しており、60cm×40cmを超える大型ワイヤーネットや、長さのある突っ張り棒が手に入ります。広いキッチンを塞ぐなら、選択肢としてダイソーを第一候補にしやすい印象です。ジョイントパーツの種類も豊富です。 |
| セリア | 「インテリアに馴染むデザイン性」 黒やブラウンなど、シックな色合いのワイヤーネットが多く、リビングから見える場所に設置しても悪目立ちしにくいのが特徴です。また、「ワイヤーネット用スタンド」などの周辺パーツもおしゃれなものが揃います。 |
| キャンドゥ | 「ニッチな便利グッズの宝庫」 網戸ロックやサッシロックなど、ピンポイントで役立つ防犯・安全グッズが充実しています。他店で見つからなかった特殊な形状の金具が見つかることもあります。 |
私の経験では、骨組みとなる大きな部材はダイソーで揃え、細かい留め具やおしゃれに見せたい部分のパーツはセリアで探す、という買い回りが効率的でした。
カウンターに登るのを防ぐ安全なガード設計

対面式キッチンやアイランドキッチンの場合、入り口を塞いでもカウンターの上からジャンプして侵入されるケースがあります。ここには「着地させない」ための物理的な障害物が必要です。
L字型ガードで着地ポイントを消す
カウンターの上に、ワイヤーネットとブックスタンド(L字型の本立て)を組み合わせて作った「衝立(ついたて)」を設置します。ブックスタンドの底面を強力両面テープ(下地にマスキングテープ使用)でカウンターに固定し、そこにワイヤーネットを結束バンドで縛り付けます。
こうすることで、カウンターの縁に高さのある壁ができ、猫が床からジャンプして飛び乗ろうとしても、視覚的な圧迫感と物理的な壁に阻まれて着地しにくくなります。「トゲトゲシート」を敷く方法もありますが、賢い猫はトゲのないわずかな隙間に足を置いたり、トゲの上に布巾を落として無効化したりするため、物理的な壁を作る方がより確実です。
狭い場所にも設置可能なスライド式の工夫
廊下が狭くてドアを開くスペースがない場合や、家具の配置的に開き戸が難しい場合は、「スライド式ゲート」が最適です。
方法は簡単です。入り口の低い位置(床付近)と高い位置(腰付近)に、突っ張り棒を2本平行に渡します。その2本の棒の間にワイヤーネットを挟み込むように設置し、結束バンドで作った輪っかをレールガイドのようにして、左右に滑らせる構造にします。
ロックの重要性:
スライド式は猫が手でチョイチョイと動かして開けてしまいやすいため、閉めている時は必ず「大きめの洗濯バサミ」や「S字フック」でネットと柱を固定し、動かないようにロックしてください。
場所別に見る猫のキッチン対策と100均グッズ活用
入り口のゲートだけでは安心できません。万が一、飼い主の足元をすり抜けてキッチンに侵入された時のために、キッチン内部の危険箇所(ホットスポット)もしっかりガードしておく「多重防御」が基本です。
ゴミ箱へのイタズラを防ぐロックと配置テク

猫がキッチンに入る最大の動機の一つが「生ゴミ」です。魚や肉のにおいがするゴミ箱は、猫にとって宝箱のようなもの。転倒させたり、蓋をこじ開けたりするのを防ぐ必要があります。
まず、ゴミ箱は必ず「蓋つき」を選びますが、それだけでは不十分です。100均の「バンド(べんりベルトなど)」で蓋と本体を縛り付けるか、側面と蓋に「多目的ストッパー」を貼り付けて、物理的に開かないようにロックします。
さらに、ゴミ箱自体を倒されないよう、底面に耐震マットを貼って床に固定するか、あるいは思い切ってゴミ箱を隠してしまいましょう。セリアの「キッチン扉用ゴミ袋ハンガー」を使えば、シンク下の扉の内側にレジ袋をセットでき、外からはゴミの存在自体が見えなくなります。視界から消すのが最も効果的な対策の一つです。
コンロやシンクでの事故をなくすカバー術
命に関わる事故が起きやすいのがコンロ周りとシンクです。
IHコンロのスイッチ対策
猫がコンロの上を歩いただけで「ピッ」と電源が入ってしまい、火事になりかけたという事例も報告されています。これを防ぐには、100均の「プラスチック保存容器(タッパー)」や「コレクションケース」を活用します。 容器をひっくり返してスイッチ部分に被せ、側面を粘着テープや魔法のテープで固定して「ハードカバー」を作ります。使う時だけパカッと開けるか、カバーごと外すようにすれば、猫が踏んでもスイッチは押されません。
シンクの侵入防止
シンクに残った食材や排水口の臭いも猫を惹きつけます。使用していない時は、シンク全体を覆うサイズのワイヤーネットを蓋として被せておきましょう。 ただ置くだけでは鼻先でズラされてしまうので、重し(水を入れたペットボトルなど)を乗せるか、シンクの縁にコマンドフックなどを貼り付けて引っ掛けられるように固定するのがポイントです。
あわせて、シンク周りの水はねや水アカ汚れを減らしたい場合は、撥水コーティング剤の比較と選び方を詳しく解説しているキッチンにコーティングして比較!超撥水!?おすすめの撥水剤は?もチェックしておくと、日常の掃除や衛生管理がぐっと楽になります。
網戸や窓からの脱走防止に必須のストッパー

換気のために窓を開ける際は、脱走リスクが一気に高まります。猫は意外と小さな隙間からでも頭をねじ込んで外に出てしまいますし、網戸自体を爪で破ったり、体当たりで枠ごと外したりすることもあります。
対策として、100均の「網戸ロック(サッシストッパー)」はとても有効です。窓枠に貼り付けるだけで、窓が一定以上開かないように制限できます。
さらに、網戸の室内側に突っ張り棒を立ててワイヤーネットを設置し、「網戸に直接触れられないようにする」のが強力な対策です。これなら網戸を破られるリスクも大きく減らせます。
環境省のガイドラインでも、猫の室内飼育と脱走防止措置は飼い主の責務として強く推奨されています。万が一の逸走は、交通事故や感染症など取り返しのつかない事態を招きます。100均グッズを活用してでも、二重三重の策を講じてください。
扉を器用に開ける猫に対抗する施錠アイテム
猫の前足は驚くほど器用です。開き戸はもちろん、引き出しやスライドドアも簡単に開けてしまいます。特にシンク下には包丁や洗剤、漂白剤などが収納されていることが多く、侵入は絶対に阻止しなければなりません。
ここには、赤ちゃん用の安全グッズである「開き戸ロック」や「多目的ストッパー」をフル活用しましょう。ダイソー、セリア、キャンドゥのいずれのベビー用品コーナーにも必ず置いてあります。 選ぶ際のコツは、猫が立った状態で体重をかけても外れないよう、なるべく高い位置(扉の上部)に設置することです。また、粘着力が弱いと力技で剥がされることがあるので、前述の「下地マスキングテープ+強力両面テープ」の技で補強することをおすすめします。
キャンドゥ等の便利商品で水回りの危険を回避

意外と見落としがちなのが、レバー式の蛇口(シングルレバー混合栓)です。猫がキッチンカウンターに飛び乗った着地などの拍子にレバーを押し下げてしまい、水が出しっぱなしになる事故が起きる可能性があります。留守中にこれが起きると、水道代だけでなく、階下への漏水など大惨事になりかねません。
対策はシンプルかつアナログです。太めのヘアゴムやS字フックを使い、レバーが動かないように蛇口の根元(スパウト部分)と固定してしまいましょう。 また、キャンドゥにはデザイン性の高い「排水口カバー」や、排水口の奥に異物が落ちないようにするネットホルダーなどが豊富です。これらを活用して、猫が排水口に手を突っ込めない環境を作っておくことも重要です。
賢く安全な猫のキッチン対策を100均で実現
ここまで、100均アイテムを駆使した様々なキッチン対策をご紹介してきました。 重要なのは、「猫の知恵と身体能力を侮らないこと」、そして「一度設置したら終わりではなく、継続的に点検・改善すること」です。猫は私たちが思う以上に賢く、設置したばかりのゲートをじっと観察し、数日で突破口を見つけ出すこともあります。結束バンドが劣化していないか、突っ張り棒が緩んでいないか、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
100均DIYの最大のメリットは、コストを抑えられること以上に、「自分の家の間取りや猫の性格に合わせて自由にカスタマイズできること」にあります。ぜひ、この記事を参考に、あなたと愛猫にとって最適な安全対策を見つけてみてくださいね。
※本記事で紹介したDIY手法は、あくまで私個人の経験に基づくアイデアです。猫の個体差や設置環境によっては十分な強度が得られない場合もあります。実施にあたっては安全性を十分に確認し、飼い主様の責任において行ってください。脱走防止など、生命に関わる重大な対策については、必要に応じて専門メーカーの製品導入もご検討ください。

