「エキゾチックブリー 値段」と検索窓に打ち込んでみたものの、検索結果に並ぶ数字を見て驚愕していませんか?日本国内の販売例を見ると20万〜80万円前後の子もいる一方で、海外や一部のブリーダーの間では、数百万円〜数千万円で取引されたと報じられる個体も存在します。「同じ犬種でなぜこれほど違うの?」「安い子は病気なの?」と疑問は尽きないはずです。
あの独特の地面を這うような重心の低さと、岩のようにゴツゴツとした筋肉質のボディ。一度見たら忘れられない魅力がある一方で、寿命や病気のリスク、実際の大きさや性格はどうなのか、そして何より「普通の会社員である私にも飼えるのか?」という現実的な不安も大きいですよね。実際、安易に購入してしまい、後の医療費や維持費の高さに悩むオーナーも少なくありません。
この記事では、そんなエキゾチックブリーの価格形成の複雑なカラクリから、購入後に絶対必要になるリアルな維持費、そして覚悟すべきリスクまで、できるだけ客観的な情報をもとにお話しします。
- マイクロやポケットなどのサイズ区分や毛色で数百万円単位で変わる具体的な相場観
- なぜ5000万円もの値がつく個体が存在すると言われるのか、その市場価値の裏側にある論理
- 購入前に必ず知っておくべき短命リスクと、避けては通れない高額な医療費の現実
- 毎月の特殊な食費や24時間の電気代を含めた、10年間の生涯コストシミュレーション
エキゾチックブリーの値段と相場の仕組み
エキゾチックブリーの価格は、一般的なペットショップで見かけるトイプードルやチワワとは全く異なるルールで動いています。多くは街のペットショップではなく、専門ブリーダーのネットワークや血統・サイズにこだわる愛好家のコミュニティの中で取引されており、「ショードッグ」としてイベントに出る価値だけでなく、ブリーダーや一部愛好家の間での「投機的な資産価値」も含んで価格が決まることがあります。
単にかわいいから高いという単純な話ではありません。その個体が持つ「生物学的な希少性」や「極端な特徴」、そして「血統のブランド力」がそのまま値段にダイレクトに反映される世界なのです。ここでは、実際に市場で見られる価格帯と、なぜそこまで差が開くのかというメカニズムについて、私の視点も交えながら整理していきます。
マイクロなどの大きさによる価格差

まず一番大きく価格を左右する決定要因は、間違いなく「大きさ」です。エキゾチックブリーの世界では、基本的に「小さくて、かつ筋肉質であればあるほど高い」という明確かつシビアな傾向があります。
市場では、体高(肩までの高さ)によって大きく分けて以下の3つのサイズ区分が意識されており、それぞれ相場が全く異なります。なお、エキゾチックブリー自体は大手畜犬団体の公認犬種ではないため、以下の体高は日本のブリーダーや情報サイトで用いられる「目安」であり、公的な統一基準ではない点に注意してください。
| サイズ区分 | 特徴・定義(体高目安) | 価格の目安 | 市場での立ち位置 |
|---|---|---|---|
| スタンダード | 43cm以上 アメリカンブリーに近いサイズ感 | 30万〜60万円 | 比較的安価で入手しやすい。 健康リスクは他サイズより低めとされることが多い。 |
| ポケット | 36cm 〜 43cm 体高が低くコンパクトな人気サイズ | 50万〜150万円 | 日本の住宅事情にマッチし一番人気。 「The エキゾチック」な体型。 |
| マイクロ | 35cm以下 極小かつ筋肉の塊のような異形 | 200万円〜数千万円 | 繁殖難易度が極めて高い。 マニア垂涎の最高級クラス。 |
特に「マイクロ」と呼ばれるカテゴリーは、本来なら自然界では淘汰されてしまうような極端な体型を、ブリーダーの努力(と執念)で固定化したものです。骨を太く、筋肉を維持したまま、体高だけを極限まで低くする「コンパクティング」は至難の業。
そのため、健全に育つ個体の数は極めて少なく、これが「世界中の需要に対して供給が圧倒的に足りない」状況を生み出し、価格を数百万、場合によっては数千万へと押し上げています。ただし、このような極端な体型は健康面でのリスクも高いため、「値段が高い=健康に優れている」とは限らない点は必ず押さえておきましょう。
「ナノ」サイズのリスク
最近ではマイクロよりさらに小さい「ナノ」と呼ばれるサイズも存在しますが、ここまでくると内臓が圧迫されるなどの健康リスクが跳ね上がると獣医師からも指摘されています。価格もリスクも青天井になるため、初心者には全くおすすめできません。
人気のカラーやレア色の販売価格

次に価格に大きく影響するのが毛色(カラー)です。エキゾチックブリーはカラーバリエーションが非常に豊富ですが、ここにもトレーディングカードのような「レア度」という概念が強く働きます。
一般的に、ブラック、ホワイト、フォーンといった標準的な色は比較的安価(といっても数十万はしますが)で取引されます。一方で、劣性遺伝子の組み合わせによって発現する以下のようなカラーは、価格が跳ね上がります。
高額になりやすいカラーの特徴
- ライラック・ブルー・シャンパン:希釈遺伝子(Dilute Gene)の作用で、光の当たり方で青や紫、淡いゴールドに見える美しい色。
- トライカラー(Tri-Color):眉毛や頬、足先に別の色(タン)が入るパターン。現在の高級ラインの標準スペックとも言えます。
- マール(Merle):遺伝子の作用で色素が不規則に抜け、大理石のような独特の斑点模様になるカラー。交配の組み合わせによっては、聴覚や視覚の障害リスクが高まることが知られているため、特に慎重な繁殖管理が必要です。
特に「チョコレート・トライ・マール」のように、複数のレア要素が組み合わさった個体は、遺伝子のパズルが奇跡的にハマった証拠として、単色個体よりも100万円単位で価格が上乗せされることが珍しくありません。InstagramなどのSNS映えも凄まじいため、海外の富裕層からの指名買いも多く、価格高騰の一因となっています。
ブリーダーから迎える際の注意点
エキゾチックブリーは、その特殊性から、街のペットショップの店頭に並ぶことはほぼありません。専門のブリーダーから直接購入するのがセオリーですが、ここには大きな落とし穴があります。
悪質な「パピーミル(子犬工場)」に最大限の注意を払ってください。
高く売れる犬種だからこそ、金銭目的で母犬の健康を無視した乱繁殖や、遺伝病のリスクを考慮しない危険な近親交配を繰り返す業者が残念ながら存在します。
私がもしエキゾチックブリーを迎えるなら、見学時に絶対に以下のポイントを厳しくチェックします。
- 犬舎の衛生状態と臭い
皮膚がデリケートな犬種なので、不衛生な環境は致命的です。床が汚れていたり、異臭がする犬舎は論外です。 - 親犬の呼吸状態
子犬だけでなく、必ず親犬を見せてもらいましょう。運動もしていないのにゼーゼーと苦しそうに呼吸している親からは、同じように呼吸器系が弱い(手術が必要な)子が生まれる確率が高いとされています。 - リスク説明(ディスクロージャー)の有無
「丈夫ですよ」「飼いやすいですよ」と良いことしか言わないブリーダーは信用しません。「暑さに極端に弱い」「関節ケアが必須」「将来的に手術が必要になるかもしれない」といったネガティブな情報を正直に話してくれる人こそ、犬の生涯を真剣に考えている信頼できるプロフェッショナルです。
性格の特徴と飼いやすさの実際
あのような強面で筋肉質のいかつい見た目から、「凶暴なんじゃないか?」「噛まれるんじゃないか?」と心配される方も多いですが、実際の性格はその真逆。拍子抜けするほど甘えん坊で、穏やかで優しい子と紹介されることが多い犬種です。
彼らは元々、アメリカンピットブルテリアなどの血を引いていますが、闘犬としての攻撃的な気質を徹底的に排除し、家庭犬として家族に愛されるように改良されてきた歴史があります。そのため、飼い主に対しては非常に従順で、隙あらば膝の上に乗ってこようとする「巨大な赤ちゃん」のような性格をしている個体も多いです。見た目とのギャップにやられる人が続出するのも納得です。
ただし、「飼いやすいか?」と聞かれると、性格面ではYESですが、物理的なケアの面ではNOと言わざるを得ません。
頑固な一面もありますし、何よりその体型的な問題から、階段の上り下りが苦手だったり、少しの運動でバテてしまったりと、散歩や日常生活で飼い主の手助けが必要な場面が多々あります。「手間がかかるほど可愛い」と思える人でないと、飼育は難しいかもしれません。
血統書が証明するブランド価値

ネットニュースなどで「エキゾチックブリー 5000万円」という見出しを見たことがあるかもしれません。これは、単なる愛玩動物としての犬の値段というよりは、「将来利益を生む動く資産」としての価値に重きが置かれた、ごく一部の特殊な取引例と考えるのが現実的です。
エキゾチックブリーの世界では、血統書は単なる家系図以上の意味を持ちます。
世界的に有名な種オス(例:Miagi, Bullseye, Daxなど)の直子や、その血を濃く引き継ぐ「ラインブリード」個体は、将来的に繁殖犬(スタッドドッグ)として活躍した際に、莫大な利益を生む可能性があります。1回の種付け料(Stud Fee)で数十万〜100万円前後の収入になる例も報告されており、購入価格には「将来の種付け料収入を見込んだ設備投資額」という側面があるのです。
「ミヤギ(Miagi)」などの伝説的な血統が入っている血統書は、もはやハイブランドの保証書と同じ。一般家庭でペットとして飼う分にはオーバースペックですが、この「血の価値」が市場価格全体を底上げしている事実は、購入前に知っておくべきリテラシーでしょう。
エキゾチックブリーの値段以外の維持費
生体価格の高さにばかり目が行きがちですが、エキゾチックブリーとの生活で本当に覚悟しなければならないのは、お迎えした後に毎月、毎年かかり続ける「維持費」の方です。多くの短頭種・大型頭部犬種と同様、エキゾチックブリーは他の犬種と比べてランニングコストが高くなりやすい犬種です。
ここでは、公開されている医療費・フード価格の目安や、ブリーダー・飼い主への聞き取りを踏まえ、きれいごと抜きの数字感をお伝えします。
気をつけたい病気と高額な治療費
エキゾチックブリーを飼う上で、医療費は「何かあったら払う」ものではなく、「毎月の固定費」として家計に組み込んでおくべきです。彼らの特徴的な体型は、以下のような健康リスクと常に隣り合わせだからです。
主な疾患と治療費の目安
- 短頭種気道症候群(BOAS)
鼻が短く喉の構造が狭いため、呼吸効率が悪いです。重症化すると軟口蓋切除や外鼻孔形成術などの手術が必要になり、検査・入院費まで含めると10万円台〜数十万円、重度例ではそれ以上かかるケースもあります。 - 皮膚疾患(膿皮症・アレルギー)
深いシワの間が蒸れやすく、脂漏症体質の子も多いため、慢性的な皮膚炎になりやすいです。薬用シャンプー、抗生剤、アポキル(痒み止め)などで、月1万〜3万円は覚悟が必要です。 - 整形外科疾患
重い体重を支える手足への負担が大きく、股関節形成不全や前十字靭帯断裂のリスクがあります。手術となれば片足で数十万円規模の出費になるケースが多く、大型犬や高度な整形外科手術では100万円近くかかることもあります。
ペット保険への加入は強くおすすめしますが、呼吸器系の疾患など、一部の先天的な形態異常に起因する問題は補償対象外になることもあるため、加入前の規約確認は必須です。無保険で手術となれば、一度の手術でボーナスが一気に飛ぶレベルの出費になる可能性もあります。
短い寿命を延ばすための健康管理

非常に悲しい現実ですが、エキゾチックブリーの平均寿命は8年〜10年程度と紹介されることが多く、一般的な小型犬(13〜15年)よりも短命になりやすいと考えられています。短頭種全体を対象にした英国の疫学研究でも、極端な短頭種は他の犬種より平均寿命が短いことが報告されています。(出典:O’Neillら『Epidemiological associations between brachycephaly and upper respiratory tract disorders in dogs』)この限られた時間を少しでも長く、幸せなものにするためには、日々のケアへの投資が欠かせません。
定期的な健康診断はもちろんですが、日々の「呼吸音のチェック」や「皮膚のシワ掃除」、そして後述する徹底した「温度管理」など、飼い主がどれだけ手間とコストをかけられるかが、寿命に直結します。「太らせすぎない」ことも重要ですが、筋肉質な体型ゆえに体重管理も難しく、専門的な知識を持った獣医師との連携が不可欠です。
筋肉を作る餌の量と食費の目安

あの隆起した筋肉と太い首、そして健康な皮膚を維持するためには、スーパーで売っているような安価なドッグフードでは栄養が足りない場合がほとんどです。高タンパク・高カロリー、かつアレルギーに配慮したグレインフリー(穀物不使用)の食事が求められます。
多くの熱心なオーナーさんは、「Bully Max」のようなブリー専用のパフォーマンスフードや、関節用グルコサミン、皮膚用オメガオイルなどのサプリメントを与えています。
食費のリアルな目安:月額3万円〜5万円
体が小さい割に食べる量は極端に多いわけではありませんが、「質の良いフード」の単価が高いのです。国産・輸入のプレミアムフードに加え、サプリメントやトッピングを組み合わせると、このくらいの金額になるオーナーも珍しくありません。安価なフードは穀物が多く、皮膚トラブルの原因になりやすいため、結果的に医療費が高くつく可能性もあります。ここは長期的に見てもケチれないポイントです。
年中必要な空調管理と電気代

彼らにとって、日本の夏は地獄そのものです。鼻が短いためパンティング(ハァハァする呼吸)での体温調節が致命的に苦手で、室温が25度を超えると熱中症のリスクが急激に高まるとされています。
そのため、特に暑い季節はエアコンをほぼ24時間稼働させるのが基本です。夏場の冷房はもちろん、冬も体温調節が苦手なため暖房が必要なケースが少なくありません。「仕事に行っている間はエアコンを切る」という選択肢は、短頭種にとってはリスクが高い行動になります。
電気代は、建物の構造や地域にもよりますが、通常の家庭よりも月額1万円前後〜2万円程度プラスになると考えておいた方が安全側です。万が一の停電に備えて、ポータブル電源や発電機を導入しているオーナーさんもいるほど、空調管理は生命線なのです。
エキゾチックブリーの値段と生涯コスト
最後に、これまで見てきた費用をざっくりと合算して、1頭のエキゾチックブリーを一生涯(ここでは10年と仮定)飼育するための総コストをシミュレーションしてみましょう。生体価格を仮に80万円とした場合でも、その金額はかなりのインパクトになります。
以下は、高品質なフードを与え、定期的な医療・ケアと空調管理を行ったモデルケースの一例であり、実際の金額は地域や個体、飼い方によって上下します。
| 費目 | 内訳・目安 | 小計 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 生体価格、ケージ、去勢手術、初期医療 | 約120万円 |
| 食費・消耗品 | 月4万円 × 12ヶ月 × 10年 | 約480万円 |
| 医療費・ケア費 | 月2万円 × 12ヶ月 × 10年 (突発的な手術費含む想定) | 約240万円 |
| 空調・電気代 | 追加分 月1.5万円 × 12ヶ月 × 10年 | 約180万円 |
| 生涯総コスト | 合計 | 約1,020万円 |
いかがでしょうか。これはあくまで一つの試算ですが、大きな病気をして高額な手術が重なれば、さらに上振れする可能性も十分にありますし、逆に健康状態や生活スタイルによってはもう少し抑えられる場合もあります。また、水槽飼育が必要なウーパールーパーのような生き物でも、ウーパールーパーの値段とホームセンターではいくらで販売されているか紹介のように、生体価格だけでなく冷却設備などの隠れたコストまで含めて考えることが大切だと解説されています。
エキゾチックブリーは、その愛くるしいキャラクターと圧倒的な存在感で、飼い主に何物にも代えがたいプライスレスな喜びと愛情を与えてくれます。ですが、それは「経済的な余裕」と「献身的なケア」があって初めて成り立つものです。
「値段」を見て高いか安いかを判断する前に、この「1000万円規模の生涯プロジェクト」を背負う覚悟があるかどうか。一度ゆっくりと胸に手を当てて考えてみてくださいね。その覚悟ができた時こそ、彼らは最高のパートナーになってくれるはずです。

