ホオジロザメは絶滅危惧種?理由や日本での生息状況を徹底調査

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ホオジロザメは絶滅危惧種?理由や日本での生息状況を徹底調査
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映画『ジョーズ』の影響で、海の王者や恐怖の象徴というイメージが圧倒的に強いホオジロザメですが、実は彼らが国際的な評価で絶滅リスクが高いとされていることをご存知でしょうか。

「あんなに強くて敵なしのサメが、なぜ絶滅の危機に瀕しているの?」と不思議に思う方も多いはずです。また、日本近海での生息状況や過去の事故記録はどうなっているのか、海水浴やマリンスポーツを楽しむ方にとっては切実な疑問ですよね。

私たちが普段メディアで見かける獰猛な姿とは裏腹に、彼らは実はとても繊細で、現代の環境変化や人間活動の影響を受けやすい側面を持つことが、研究からも示されています。

この記事では、公開されている研究や公的機関の資料などをもとに、ホオジロザメが直面している現実や、私たち人間社会との複雑な関わりについて、専門的な話を分かりやすく噛み砕いて解説していきます。

この記事のポイント
  • ホオジロザメが絶滅危惧種に指定されている具体的な理由と背景
  • 繁殖力の低さや寿命など意外と知られていない生物学的な弱点
  • 日本近海におけるホオジロザメの目撃情報や過去の事故記録
  • 水族館での飼育が難しく展示されていない驚きのメカニズム
目次

ホオジロザメが絶滅危惧種に指定された理由

まずは、なぜ海洋生態系の頂点に君臨するホオジロザメが、絶滅の危機にあると言われているのか、その根本的な理由について深掘りしていきましょう。単に「数が減った」という表面的な話だけではなく、彼らの生態そのものが、現代の急速な環境変化や人間の経済活動に対して、構造的に脆い側面を持つことが大きく関わっています。

  • 国際的なIUCNレッドリストの評価
  • なぜこれほど個体数が減っているのか
  • 寿命が長く繁殖力が低い生物学的要因
  • 映画ジョーズの悪影響と駆除の歴史
  • フカヒレ狙いの乱獲や混獲による脅威

国際的なIUCNレッドリストの評価

国際自然保護連合(IUCN)による評価。世界全体では危急種(VU)、地中海では近絶滅種(CR)に指定されている解説図。
ホオジロザメのIUCNレッドリスト評価状況

野生生物の保全状況を評価する世界的な枠組みの一つであるIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、ホオジロザメは世界全体で「危急種(Vulnerable: VU)」として評価されています。これは、野生での絶滅リスクが一定以上に高いと判断された種に与えられるカテゴリーです(出典:IUCN『Carcharodon carcharias(White Shark)評価(2022)』)。

しかし、世界を一括りにするのではなく、海域ごとの評価を見ていくと、地域によって危機の度合いが大きく異なることが知られています。特に、地中海地域の個体群に関しては「近絶滅種(Critically Endangered: CR)」とされるなど、極めて危険なレベルにあると整理されています。

世界全体では「危急種」という評価ですが、地中海のような閉鎖性の高い海域では、個体群が小さくなりやすく回復もしにくいため、より深刻なランクで扱われることがあります。地域によって危機の切迫度には大きな差があるのです。なお、レッドリストのカテゴリの見方そのものを整理したい方は、絶滅危惧種の意味とレッドリストの基本的な見方も参考になります。

地中海では歴史的に大型魚を狙う漁業などとの重なりもあり、混獲や生息環境の変化の影響を受けやすいとされます。また、近年の研究では、外洋性のサメ・エイ類が1970年以降に大きく減少したという推計も示されており、ホオジロザメも「例外ではない」と捉えるのが現実的です。

なぜこれほど個体数が減っているのか

「海の殺し屋」とも呼ばれる最強の生物が、なぜこれほどまでに減ってしまったのでしょうか。原因を探っていくと、皮肉なことに彼らの「強さ」の源泉である生態的地位(高次捕食者であること)が、現代においてはリスク要因にもなっていることが見えてきます。

ホオジロザメは食物連鎖の頂点に位置しています。これは自然界に天敵がほとんどいない(地域によってはシャチなどに襲われる例もある)ことを意味しますが、同時に食物連鎖を通じて取り込まれた汚染物質が体内に蓄積しやすいポジションでもあります。

生物濃縮という見えない脅威

海洋生態系のピラミッド図。プランクトンから大型魚へ、水銀やPCBなどの汚染物質がホオジロザメの体内で高濃度に蓄積される様子。
食物連鎖と生物濃縮のメカニズム

海中に流入した水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTなどの残留性の高い化学物質は、生態系の中で分解されにくく、プランクトン→小魚→大型魚という過程で濃縮・蓄積しやすいことが知られています。その結果、上位捕食者であるホオジロザメの体内から高濃度で検出されることがあります。

実際に、南カリフォルニア周辺の幼体(若い個体)で、DDTやPCBなどの有機汚染物質が非常に高い濃度で検出されたことが報告されています。こうした汚染物質は、成長・免疫・ホルモン系などに悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、長い時間をかけて繁殖する種にとっては、個体群の回復をさらに難しくする要因になり得ます。

寿命が長く繁殖力が低い生物学的要因

進化の代償としてのK戦略。成熟個体の減少が個体群回復を困難にする理由を解説したスライド。
ホオジロザメの繁殖戦略「K戦略」のリスク

私がリサーチしていて特に重要だと感じたのが、ホオジロザメの成長スピードの遅さと寿命の長さです。彼らは一般的な「魚」のイメージとはかけ離れた、長いライフサイクルを持っています。

放射性炭素(いわゆる“核実験由来”の放射性炭素)を用いた年代推定により、ホオジロザメが70年を超える年齢に達しうることが示された研究があります。一方で、推定可能な最大年齢や性差には不確実性も残るため、「長寿で、成熟が遅い」という点を押さえるのが実務的です。そして、絶滅リスクを考える上で最も重要なのが、「大人になって子供を作れるようになるまでにかかる時間(性成熟年齢)」です。

ホオジロザメとマグロの寿命、成熟年齢、産子数の比較データ。人間一人分に相当する成熟までの長い時間を図示。
ホオジロザメと一般的な魚の成長速度比較
項目ホオジロザメのデータ一般的な魚(例:マグロ)
寿命最大70年以上(推定)15〜30年
性成熟 (繁殖可能になる年齢)オス26歳 / メス33歳(推定)3〜5年
一度に産む数2〜10尾(推定)数百万〜数千万粒
妊娠期間12〜18ヶ月(推定)

表を見ていただければ分かる通り、メスのホオジロザメが子供を産めるようになるまでには、非常に長い時間がかかると考えられています。生まれてから長期間にわたって生き延びた個体だけが、ようやく次世代を残せる段階に到達するため、成体が減ると回復に時間がかかりやすいのです。

【豆知識:K戦略とは】 このように「少数の子供を時間をかけて大切に育てる」繁殖戦略を、生態学では「K戦略」と呼びます。環境が安定している時代には強者でしたが、現代のように漁業圧や混獲などで成熟個体が減る状況では、個体数の回復に長い時間がかかりやすくなります。地域差が大きい点も重要で、同じ種でも評価が変わる考え方は、地域で違う「絶滅危惧」の実態(レッドリストの地域差)の視点とも共通します。

映画ジョーズの悪影響と駆除の歴史

映画フィルム風のサメのイラストと網にかかるサメ。怪物としてのイメージによる駆除と、意図せざる混獲の罠について。
映画ジョーズによる誤解と混獲の脅威

ホオジロザメの減少には、生物学的な理由だけでなく、私たち人間の持つ「イメージ」も関わっています。1975年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ジョーズ』は世界的な社会現象となりましたが、同時に「サメ=人間を積極的に狙う怪物」という誤解を広めた面がある、という指摘もあります。

その後、国や地域によっては「人命保護」を目的とした対策として、サメ除けネットやドラムライン(無人釣り針)などが導入され、ホオジロザメを含むサメ類や他の海洋生物が混獲・死亡する問題が続いてきました。もちろん安全対策は重要ですが、近年は「生態系への影響」や「非対象種の混獲」をどう減らすかが強く問われています。

なお、『ジョーズ』の原作者であるピーター・ベンチリー氏が、後年にサメ保護の必要性を訴えるようになったことはよく知られています。映画的な誇張と現実の生態が大きく違うことを踏まえ、「恐怖」だけで判断しない視点が重要です。

フカヒレ狙いの乱獲や混獲による脅威

現在、彼らを物理的に最も脅かしているのは商業漁業、とりわけ混獲(こんかく)です。ホオジロザメはフカヒレ目的の主要ターゲットとして語られることは多くありませんが、意図せず網にかかる、あるいは部位(顎・歯など)を目的とした違法な捕獲・取引が起こり得る点は無視できません。

アメリカ西海岸〜メキシコ沿岸(バハ・カリフォルニア周辺)には、ホオジロザメの幼体が集まりやすい沿岸域があるとされます。一方で、こうした海域は沿岸漁業とも重なりやすく、幼体や若い個体が刺し網などで死亡することが、地域によっては重要な減少要因になり得ます。数字で「何割」と断定できるほどデータが揃っていないケースもあるため、ここは「混獲が個体群にとって大きなリスクになりやすい」と整理するのが正確です。

【注意:フィニングの問題】

サメ類全体では、生きたままヒレだけを切り取って胴体を投棄する「フィニング(Shark Finning)」が国際的な問題として知られています。ホオジロザメに関しては、フカヒレよりも顎や歯が目的になりやすいと言われますが、いずれにせよ「部位目的の捕獲・違法取引」が保全上の脅威になり得る点は共通しています。

ホオジロザメは絶滅危惧種だが日本にいる?

さて、ここからは私たちの住む日本に視点を移してみましょう。「絶滅危惧種だというなら、日本ではもう見られない生き物なの?」と思うかもしれませんが、ホオジロザメは日本近海でも確認例がある種です。ただし、個体数を定量的に把握するのは難しく、「どれくらいいるか」を断言できるデータが揃っているわけではありません。

  • 日本近海での目撃情報や過去の事故の記録
  • なぜ日本の水族館で飼育できないのか
  • ワシントン条約による取引規制の現状
  • 観光資源として生み出す経済的な価値
  • ホオジロザメを絶滅危惧種として守る未来

日本近海での目撃情報や過去の事故の記録

日本列島は、北海道から沖縄まで非常に広い範囲が回遊性の大型サメ類の移動経路と重なり得ます。実際に、定置網などで大型サメが混獲される報告は各地で見られ、ホオジロザメも「日本で全く見られないサメ」ではありません。

過去には、残念ながら人間が襲われる死亡事故も発生しています。

  • 1992年 愛媛県松山沖:タイラギ漁を行っていた潜水夫が襲撃され行方不明に(後に死亡が認定された事例として学術的に報告)。
  • 1995年 愛知県伊良湖沖:ミル貝漁の潜水夫が襲われ死亡(装備の損傷状況などから詳細調査が報告)。

海外ではサーファーが襲われるイメージが強いですが、日本で学術的に詳細が整理された重篤事例は、漁業従事者、特に潜水して作業する方が被害に遭うケースが目立ちます。濁りやすい環境での作業や、獲物に近いシルエット・動きが要因になる可能性が指摘されますが、事故は複合要因で起きるため、単一の理由に決めつけないことも大切です。

なぜ日本の水族館で飼育できないのか

「そんなに珍しいサメなら、ぜひ水族館で実物を見てみたい」と検索する方も多いようですが、現在、日本国内でホオジロザメを長期飼育して常設展示している水族館は確認されていません。これには明確な理由があります。

日本では、沖縄美ら海水族館が2016年に、定置網にかかった全長約3.5mの個体を短期展示した例があります。しかし、万全の体制で臨んだにもかかわらず、個体は数日で死亡したと報じられており、ホオジロザメの飼育がいかに難しいかを示す出来事となりました。なお、世界的にはモントレーベイ水族館が2000年代に複数の幼体を一定期間飼育し、成長前に放流する取り組みを行ったことが知られています。

飼育を阻む3つの壁

日本の水族館で見られない理由。呼吸法、壁への衝突、ストレス脆弱性の3点解説。
ホオジロザメの飼育を阻む3つの壁
  • ラム換水法:彼らは呼吸のために遊泳を続け、口から海水を取り込む(ラム換水)性質が強いとされます。長時間「停止」させる飼育は難易度が上がります。
  • 壁を認識できない:外洋で長距離を泳ぐ生活に適応しているため、水槽という人工環境で衝突リスクが高くなりやすいとされます。衝突は体表の損傷だけでなく、感覚器官へのダメージにもつながり得ます。
  • 極度のストレス:捕獲や輸送のストレスに弱く、環境変化で摂餌が不安定になりやすいことが知られています。結果として、衰弱が進むケースがあります。

世界的に見ても、モントレーベイ水族館が幼体を最長で数ヶ月(事例によっては半年規模)飼育して放流した例があるくらいで、成体の長期飼育は依然として極めて困難な領域にあります。

ワシントン条約による取引規制の現状

ホオジロザメを国際的な乱獲から守るため、「ワシントン条約(CITES)」においても重要な規制対象となっています。2004年から、ホオジロザメは「附属書II」に掲載されています。

これは「商取引を完全に禁止するわけではない(附属書Iとは異なる)が、輸出国政府が科学的根拠に基づいて『その取引が種の存続を脅かさない』と判断し、許可証を発行しなければ輸出入してはいけない」という仕組みです。

この規制により、部位(顎の骨、歯など)を含む国際取引にはチェックが入りやすくなりました。しかし、加工品は外見からの判別が難しい場合もあるため、DNA鑑定などを含む監視の強化が課題として挙げられます。

観光資源として生み出す経済的な価値

サメを資源として消費するのではなく、観光パートナーとして共存する保全の考え方。
シャーク・ツーリズムへの発想転換

一方で、ホオジロザメを「殺して売る」のではなく「生かして見せる」ことで価値を見出す動きも世界中で広がっています。それが「シャーク・ツーリズム」です。

メキシコ近海や南アフリカなどでは、野生のホオジロザメを観察するツアーが人気を集めてきました。経済効果は地域や制度設計で大きく変わりますが、研究や試算では「1個体あたりで数千万円〜100万ドル規模」といった評価が示されることもあり、「生きたまま守る」ほうが長期的に地域へ利益をもたらす可能性があります。

「1億円」の文字とサメのイラスト。1個体が生涯で生み出す観光資源としての経済的価値の試算。
ホオジロザメ1頭が生み出す経済効果

【視点の転換】

部位として一度きりで売るよりも、生きたまま観光資源として保護した方が、地域経済に継続的な利益を生みやすいという考え方があります。もちろん、餌付けなどの運用次第では生態への影響が問題になることもあるため、「保全に資する形での観光設計」が前提になります。

ホオジロザメを絶滅危惧種として守る未来

海の生態系バランスを保つ存在としてのサメ。恐怖の対象から敬意を払う対象への意識改革を促すメッセージ。
海のバロメーターとしてのホオジロザメ

ホオジロザメは単なる「怖い生き物」ではありません。彼らが海の頂点捕食者として存在してくれるおかげで、アザラシやオットセイ、あるいは他の肉食魚の数が増えすぎず、海洋生態系全体のバランスが保たれやすくなる側面があります。もし彼らがいなくなれば、食物網の構造が変わり、巡り巡って私たちが食べる魚の資源にも影響が及ぶ可能性があります。

彼らが絶滅危惧種として評価されているという事実は、私たちの海が人間活動の影響を受けていることの警告サインでもあります。日本近海にも現れるこの捕食者が、これからも海を泳ぎ続けられるよう、まずは「ただ怖がる」のではなく「正しく知り、敬意を持つ」ことから始めてみるのが、共存への第一歩ではないでしょうか。

※本記事の情報は執筆時点の調査に基づく一般的なものです。日本周辺海域の漁業・海洋環境に関する最新情報は、公的機関が公表する資料等をご確認ください。 (参考:水産庁等が公表する国際漁業資源・海洋環境に関する情報)

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この記事を書いた人

はじめまして、管理人の「零(れい)」です。 このブログ「まっさらログ」にお越しいただき、本当にありがとうございます。
ここは、日常で感じたことや新しく始めたことを、「まっさら」な視点で記録していく雑記ブログです。

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