最近、ふと気がつくと近所で「チュンチュン」というあの賑やかな鳴き声を聞かなくなったと感じることはないでしょうか。私たちが子供の頃は、電線に鈴なりになっていたり、庭先で砂浴びをしていたり、どこにでも当たり前にいたあの愛らしい姿。それが年々減っている気がして、「もしかしてスズメは絶滅危惧種になってしまったのか?」と不安に思う方も多いはずです。
実際に調べてみると、その直感は「気のせい」とは言い切れません。国のレッドリストではスズメは現時点で掲載対象外(ランク外)ですが、長期モニタリングでは“身近な普通種”として減少が確認されており、地域や環境によっては生息状況が悪化している可能性が示されています。しかも、その減少の背景には、自然環境だけでなく、私たちの暮らし方(家のつくりや緑地・農地の管理の変化)が深く関わっていることが研究で指摘されています。なぜこれほどまでに身近な隣人がいなくなってしまったのか、その背景にある事実と、私たちができる対策について、研究知見や公的調査を踏まえてまとめます。
- スズメは国の基準では絶滅危惧種ではないが、調査サイトによっては減少が確認され、地域差が大きい
- 高度経済成長期(1960年代)と比較して個体数が約10分の1にまで減少した可能性がある、という推定研究がある
- 減少要因として「現代住宅の気密性(営巣場所の減少)」や「農薬を含む農地・緑地管理の変化による餌資源(昆虫など)の減少」などが有力視されている
- 個人でできる対策として適切なサイズの巣箱設置や、餌・隠れ場所になる環境作りがある
雀は絶滅危惧種なのか?現状の真実
「まさか、あのスズメが絶滅するわけがない」と、私も最初は思っていました。しかし、研究や公的な長期モニタリングを読み解くと、少なくとも“見かけにくくなっている”という感覚には裏付けがあり、地域や環境によっては深刻な変化が起きていることがわかります。ここでは、公的なレッドリストでの扱いと、どれくらいのスピードで彼らが減っているのかという「現状の真実」について掘り下げていきます。
- 環境省や東京都のレッドリスト指定状況
- スズメが減少している理由とデータ
- ニュウナイスズメとの違いと混同
- セグロセキレイも絶滅危惧種なのか
- 街からスズメがいなくなった背景
環境省や東京都のレッドリスト指定状況
まず結論から申し上げますと、国(環境省)が公表するレッドリスト上では、スズメは現時点で掲載対象外(ランク外)として扱われています。つまり、日本列島全体という広い枠組みで見れば、「直ちに絶滅の恐れが高い種」とは判定されていません。

(出典:環境省 生物多様性センター「鳥類標識調査 回収記録データベース:スズメ(Passer montanus)」)
一方で注意したいのが「地域ごとの見え方」です。自治体のレッドリストは、基本的に“その地域で希少・危機的な種”を掲載するため、全国的に普通種であるスズメは掲載されないことも多くあります(=掲載されていないからといって、地域で減っていないことの証明にはなりません)。実際、都市部・里地里山の長期調査では、スズメを含む普通種の減少が示されています(同じように「国では対象外でも、地域では状況が違う」例としてニホンヒキガエルは絶滅危惧種?地域で違うランクと飼育の注意点も参考になります)。
| 自治体 | カテゴリ | 指定理由・背景 |
|---|---|---|
| 東京都(区部・多摩) | 掲載なし(ランク外扱い) | 東京都のレッドデータブック等は主に希少種を掲載するため、スズメのような普通種は対象外になりやすい。ただし“普通種の減少”自体は別調査で指摘されている。(出典:東京都環境局『東京都レッドデータブック(本土部)』等) |
| 千葉県 | 掲載なし(ランク外扱い) | 千葉県のレッドリストは県内の希少種を中心に掲載するため、一般的な普通種であるスズメは通常掲載されない。(出典:千葉県『レッドデータブック・リスト』) |
| 環境省(国) | ランク外(掲載対象外) | 全国的には広範囲に分布し、レッドリスト上は掲載対象外として扱われている。(出典:環境省 生物多様性センター 鳥類標識調査DB) |
このように、レッドリスト“掲載の有無”だけで安心・不安を判断するのではなく、長期モニタリングや地域の調査結果も合わせて見ることが重要です。
スズメが減少している理由とデータ
「最近見かけない」という感覚は、研究上も裏付けがあります。スズメの個体数について、各地の記述・データを集めて検討した研究では、現在の個体数は1990年ごろの20%〜50%程度に減少したと推定され、さらに1960年代と比べると1/10程度になった可能性が示されています。(出典:三上修「日本におけるスズメの個体数減少の実態」(日本鳥学会誌, 2009))

また、より近年の公的モニタリングでも減少傾向が報告されています。たとえば、環境省の「モニタリングサイト1000(里地調査)」の2005〜2022年度のとりまとめでは、身近な普通種を含む多くの鳥類で減少が確認され、スズメもその対象に含まれています。(出典:環境省『モニタリングサイト1000 里地調査 2005-2022年度 とりまとめ報告書/結果概要』)
【減少のスピードと公的データ】
環境省の「モニタリングサイト1000(里地調査)」のとりまとめでは、里地里山の調査サイトにおける解析として、スズメを含む普通種で記録個体数の減少が示されています。なお、この種の結果は“調査サイトでの傾向”であり、全国個体数をそのまま断定するものではない点も同時に注意喚起されています。
(出典:環境省『モニタリングサイト1000 里地調査 2005-2022年度 とりまとめ報告書/結果概要』)
ニュウナイスズメとの違いと混同
「雀 絶滅危惧種」とWEBで検索した際に、情報が混ざって混乱しやすいのが「ニュウナイスズメ」という鳥の存在です。私たちが普段街中で見かけるスズメ(Passer montanus)とは別の種類で、本来は林や森を好む傾向がある鳥です。
ニュウナイスズメは地域によってレッドリストに掲載されることがあり、これが混同されることで情報が複雑になりがちです。ただ、見分け方のポイントはシンプルです。
【スズメとニュウナイスズメの見分け方】
- 普通のスズメ: 頬に黒い斑点(ほくろのような模様)がある。
- ニュウナイスズメ: 頬に黒い斑点がなく、白っぽく見える。頭の赤茶色がより鮮やかに見えることが多い。
ただ、今回私たちがここで問題視すべきなのは、森や林縁のニュウナイスズメというよりも、あくまで「人の隣で暮らしてきた普通のスズメ」が見かけにくくなっているという点です。
セグロセキレイも絶滅危惧種なのか
スズメと同じく、身近な鳥である「セグロセキレイ」についても触れておきましょう。白黒のスマートな体で、駐車場や川沿いを歩いている姿を見たことがある方も多いと思います。
公的な長期モニタリングでは、セグロセキレイも“普通種としての減少”が示されています。たとえば、モニタリングサイト1000(里地調査)の解析が報道等で紹介された例では、2008〜2022年の年あたり減少率として、スズメが約3.6%に対し、セグロセキレイが約8.6%とされ、減少のペースがスズメより速い可能性が示唆されています。(出典:環境省『モニタリングサイト1000 里地調査 2005-2022年度 とりまとめ報告書/結果概要』)

河川改修・護岸整備、草地や中洲の減少など、採食・繁殖に関わる環境が変化している可能性も指摘されますが、要因は地域差が大きく、単一原因で断定できるものではありません。
スズメだけでなく、「昔はどこにでもいた鳥」が見かけにくくなるケースが出てきているのが、近年の大きな特徴です。
街からスズメがいなくなった背景
なぜ、これほどまでにスズメは街から姿を消してしまったのでしょうか。スズメは人の生活圏と強く結びつく鳥(いわゆるシナントロープ/人里性の強い種)で、住まい(営巣場所)や餌資源が、人の暮らし方の影響を受けやすいことが知られています。
カラスや猛禽類などの天敵、繁殖場所の確保、ヒナの餌(昆虫など)の量――こうした要素が少しずつ崩れるだけでも、個体数の減少につながり得ます。次の章では、その具体的な論点である「住宅」と「食料」の問題について、研究でよく挙げられるポイントを整理します。
雀を絶滅危惧種にしないための対策
ここまで読んで、少し暗い気持ちになってしまったかもしれません。でも、原因の候補が見えれば、私たちができる対策も見えてきます。スズメが直面している「住宅難」と「食糧難」について正しく理解し、個人レベルでできる一歩を考えてみましょう。
- 住宅の気密性と巣作りの場所不足
- ネオニコチノイド農薬による餌不足
- 庭にスズメを呼ぶ巣箱の作り方
- 雛の保護や飼育に関する法的注意
- 雀が絶滅危惧種になる未来を防ぐ
住宅の気密性と巣作りの場所不足
スズメの減少要因として、住宅構造の変化(新しい住宅地で営巣密度が低いこと)を示す研究があります。昔の日本家屋の瓦屋根や軒下、雨樋まわりなどの“適度な隙間”が、スズメの営巣場所になっていた可能性があり、建て替えや高気密化でそうした場所が減った、という仮説が支持されています。(出典:三上修ほか「近年建てられた住宅地におけるスズメの巣の密度の低さ」(Bird Research, 2013))
現代建築がスズメを締め出した
最近の住宅は高気密・高断熱が当たり前になり、屋根・外壁・通気部材の仕様も変わりました。結果として、スズメが入り込める隙間が減り、営巣しにくくなっている可能性があります。

ただし、地域の緑地の量など他要因も絡むため、建物の新旧だけで決まるわけではなく、緑地と営巣場所の関係を検討した研究もあります。(出典:須藤翼「緑地の存在と住宅の隙間の数がスズメの営巣密度に与える影響」(日本鳥学会誌, 2017))
【都市再開発の影響】
古い木造住宅や低層住宅が建て替わることで、これまで“偶然提供されていた営巣場所”が減る可能性があります。都市部では、こうした累積が地域の個体数に影響し得るため、巣箱などの補完策が現実的な対策になります。
ネオニコチノイド農薬による餌不足
「住む場所」と同じくらい重要なのが「食べるもの」です。普段は植物の種なども食べますが、子育ての時期にはヒナの成長のために、親鳥が昆虫(イモムシ、クモなど)を多く運ぶことが知られています。

一方で、農地の集約化や除草の徹底、農薬・肥料を含む管理の変化は、昆虫を含む餌資源を減らし得る要因として国際的にも議論されています。ネオニコチノイド系農薬についても、昆虫の減少を介して鳥類に影響が及ぶ可能性を示唆する研究が海外で報告されていますが、日本のスズメ減少を単独で説明できるほど因果が確定しているわけではありません。したがって、ここは「一因になり得る」という整理が現実的です(家庭園芸で使われるネオニコ系の代表例や、散布時に気をつけたいポイントはバラの殺虫剤と殺菌剤の組み合わせ。基本的な使い方と注意点でも具体例があります)。
「巣があっても、ヒナに与える虫が少ない」――もしこうした状況が起きれば繁殖成功率が下がり得ます。だからこそ、家庭の庭や地域の緑地で、過度な薬剤使用を避け、虫や草本が残る“余白”を少し作ることが、間接的な支えになります(農薬や水質の変化が身近な生き物にどう影響し得るかはアメンボが絶滅危惧種?身近な水辺から消える原因と守る方法も参考になります)。

庭にスズメを呼ぶ巣箱の作り方
現代の家に隙間がないのなら、私たちが「代わりの家」を用意してあげることは有効な対策になり得ます。もし庭があるなら、DIYで巣箱を作って設置してみてはいかがでしょうか。
ただし、ただ木の箱を置けばいいわけではありません。重要なのは「入り口の穴のサイズ」です。スズメの巣箱の穴径については、30mm前後が推奨され、実験的検討でも30mm台前半が利用・繁殖成功に関係する可能性が示されています。(出典:佐藤晴香ほか「スズメを誘致するために効果的な巣箱の入口穴径と設置」(Bird Research, 2021))
失敗しない巣箱のサイズ

【スズメ用巣箱の黄金ルール】
- 穴の直径: 約3.0cm(30mm)前後が目安
- 理由: 小さすぎるとシジュウカラ類向きになりやすく、逆に大きくしすぎるとムクドリなど体の大きい種が利用しやすくなります。スズメが使いやすい穴径に寄せることがポイントです。
設置に最適な場所と時期
設置時期は、秋から冬にかけてがおすすめです。冬の間に「ねぐら」として慣れてもらえると、春の繁殖期にそのまま使われることがあります。高さは地上から2〜3メートル程度、猫などの捕食者に近づかれにくい場所を選び、出入り口の前が塞がれない向きに設置しましょう。巣箱は年に1回、繁殖期が終わった後に掃除・点検するのも大切です。
雛の保護や飼育に関する法的注意
スズメを助けたいという気持ちが強すぎて、地面にいるヒナを拾ってしまう方がいますが、これには厳重な注意が必要です。巣立ち直後のヒナはまだうまく飛べず、地面にいることがよくあります。でも、近くで親鳥が見守っていることも多いのです。

【法律上の注意点】
野鳥を許可なく捕獲・飼育することは「鳥獣保護管理法」等により原則として制限されています。かわいそうに見えても、連れ帰ることで親鳥から引き離してしまい、かえって生存率を下げることがあります。
明らかに重傷(出血がひどい、翼が垂れて動けない、車道で危険など)で放置できない場合は、まず各都道府県の鳥獣保護担当部署に相談してください。自治体の窓口一覧は日本野鳥の会などが案内していることがあります。
「手を出さずに見守る」というのも、立派な保護活動の一つです。
雀が絶滅危惧種になる未来を防ぐ
今回は「雀 絶滅危惧種」というキーワードをきっかけに、身近な隣人が直面している変化について整理しました。公的な長期調査では、調査サイトにおける記録個体数として、スズメが年あたり数%規模で減少している可能性が示されています(例:里地里山の解析で年約3.6%など)。この数字は、決して楽観視できるものではありません。
スズメが見かけにくくなることは、私たちの暮らす環境が「生き物にとって住みにくい場所」になっているサインでもあります。自宅の庭での薬剤散布を少し控えてみたり、草花や低木を残して虫が戻る余地を作ったり、適切な巣箱を掛けてみたり。あるいは、道端の巣立ちヒナをそっと見守ること。
そんな小さな関心の積み重ねが、いつかまた「チュンチュン」という賑やかな声が溢れる街を取り戻すことにつながるのではないかと思います。


